いい匂い、悪い臭い

アロマオイルの空き瓶、かわいいガラスは捨てづらいのです。

匂いと感じるか、臭いと遠ざけるか。人間、嗅ぎなれた香りには、慣れてしまって不快に思わないようですが、初めての臭いには、特別な反応をするらしいです。ドイツでこんなことがありました。

お昼ご飯時。野菜をとっておきのごま油で炒めていました。すると同居していた(別のフロアに住んでいました)家主が飛んできて、「フィオーラ、お料理をする時は、窓を開けて換気扇をまわしましょうね」と、大慌てでキッチンの全窓を全開にしました。

私はごま油を炒める香ばしい匂いは大好きなのですが、中国人との結婚歴があり、中国に一時期住んでいたという家主が、血相を変えるくらい、ドイツ人には異常な臭いだったようです。

春夏物の服を秋冬物にチェンジする衣替えの季節。一人の駐在員が私のデスクにやってきて、ボヤき始めました。「マシマちゃん、俺のオフィスの社員たち、みんな出て行っちゃったんだよ。隣の部屋のドアもこれ見よがしに閉じられたし。何が起きているんだろう?」

彼のオフィスは大部屋で、5人(ドイツのオフィスは、一人当りのスペースが広いのです。私は当時、2人部屋でした)が一緒に執務をとっていたのですが、みんなが逃げてしまったようです。

私のボスが、「フィオーラ、S(当該の駐在員)がクサイのよ」と言っていたのを思い出し、クンクンと確かめてみると、《樟脳》のにおいが。ははあん、これですね。ドイツではそもそも衣替えの習慣がないので(収納スペースがたっぷりあるので、前と後ろを入れ替えるくらい)嗅ぎなれない香りが「くさい」と感じられたのでしょう。

めったに魚を食べないドイツでは(内陸なので肉食が中心です。金曜日は魚を食べる日になっていました)日本人が焼き魚をしようものなら、その煙と臭いに「異臭だ! 火事だ!」と大騒ぎになることもあったそうで。

ドイツのキッチンのコンロには、大きなオーブンはついていますが、魚用のグリルはありません。魚好きは、蓋のできる魚焼き器を使っているケースが多かったですね。

そして用心として、魚を焼いた後は、コーヒーを淹れたり、香料のたっぷり入ったケーキを焼いたりして、魚のにおいがキッチンに沁みつくのを防いでいました。そこまで努力しないと、焼き魚が食べれないなんて(涙)

海外から来た人たちは、日本に着くと「味噌と醤油のにおいがする」と感じるそうです。私の印象深い香りの記憶は、韓国のキムチかなあ。あまり鼻は敏感ではありません。

ドイツ人が読む旅行ガイドブック・日本編には、靴と靴下に注意という文言があります。靴下には穴があいていないか確認すること、そして、靴を脱いだ時、臭わないように注意を払っておくこと。普段、靴を履いたままの生活をしている欧米人らしい気配りですね。

でも私、高級割烹にいきなり連れていかれた時、靴下に大きな穴があいていて、大恥をかいたことがあります。皆さん、靴下への投資は惜しまないように・・・