認知症。
アルツハイマー病やレビー小体病、脳血管性認知症などの総称で、おそらくほとんどの人が、将来この病にかかるのは「イヤだ」と思っている症状。
世間には、認知症予防に関する書籍が”氾濫”していると言っても過言ではないくらい。
そして認知症になることは、人生の【敗北】のような風潮さえあります。
著者・クリスティーン・ブライデンさんは、オーストラリア政府の首相・内閣省の第一次官補という要職で激務をこなしながら、3人の娘を育てるシングルマザーという、想像を絶するような超超超多忙な日々を過ごしておられた方でした。
普通、人は、脳の機能をせいぜい40~50%くらいしか使っていないと言われています。
いわゆる「火事場の馬鹿力」を発揮している時に、80~90%くらいが稼働しているとか。
でもクリスティーンさんの仕事ぶり・生活ぶりをイメージすると、脳を常にフルスロットルで働かせていらしたのではないかと思います。
そんな彼女が若年性認知症と診断されたのは、46歳の時。これはもう、神様の「もう貴女の脳を休ませてあげなさい」という啓示ではないかと、私などは思ってしまいます。
それほど有能だった女性ですから、認知症の具体的な辛さ・不便さ・悩み・要望等々を、罹患していない人々に理解しやすいような本にして著すことは、ある意味、適任者と言って差し支えないでしょう。
もちろん、執筆には、これまた常人には想像もつかない苦労が、もう山のようにあったことと思います。
最近は、日本でも、若年性認知症をテーマにした映画の上映なども見られ、世間の関心も少しは高まっているのでしょうか。
少々古い本なので、認知症が「痴呆症」という昔の呼称で書かれています。
人によっては不快感を感じる名称かもしれませんが、変に取り繕って意味がわかりにくい「認知症」という現在の呼び方より、昔の「痴呆症」の方が、人々に想起しやすいような気がするのは、私だけでしょうかね。
老いは全ての方に平等にやってきます。読んでおいて損はない本だと思っております。