メルケル前首相の評伝。プーチンの冷酷さがよく著されています。

二村店長。せっかくご推薦いただいた本がなかなか読み終えられず、ごめんなさい。まるでウクライナ侵攻を予告されていたような、タイムリーな選書でした。メルケル前首相を様々な人が評している、とてもリアリティあふれる評伝。大変興味深く読ませていただきました。

メルケル氏の評判は、世界的にはとても高いものの、ドイツ国内では大歓迎されているわけではありません。難民の受け入れは国際道義的には素晴らしい決断でしたが、ドイツでは失業率の悪化や犯罪の増加につながり、ドイツ国民にとってはマイナスイメージが高かったのです。

でも、コロナが蔓延した時に、物理学専攻者らしいロジカルな演説・国民へのお願い、また真摯な謝罪などは、ドイツ国民も十分納得し、世界中からは羨望の目でみられるリーダーシップでした。

ドイツとロシアの深い関係。それはプーチン大統領がドイツ滞在歴が長く、ドイツ語も堪能であること。一方メルケル氏も東ドイツ出身でロシア語に造詣が深く、流暢に話せること。この2つの要因で、2人はお互い自分の意見を相手の母語で話すことができ、あのプーチン大統領もメルケル氏には一目置いているところがあります。

そのメルケル氏が首相職を退いたことが、ロシアのタガを外してしまい、不幸な戦争へと進んでしまったように思えて、ウクライナ国民に同情を覚えております。

メルケル氏の冷静さ、奢り高ぶらない質素な資質、物理学的見地から物事を判断する、一種絶対的な公平さなど、長期政権をとりながら、癒着などもなく、惜しまれて退陣した姿は、憧れのドイツ人女性として、私の中では最高の位置に君臨しています。

時計一つをとっても、せいぜい1万円程度の腕時計を「時間が正確にわかれば良い」と愛用されている潔さは、政治家として最も大切な資質ではないかと、心からの尊敬の念を送らずにはいられません。

プーチン大統領の残虐な性格は、この評伝の中にもリアルに見受けられます。オバマ元大統領の自書「約束の地」でも、その一旦が見受けられたので、本当に恐ろしい人なのでしょう。かつての豊臣秀吉を彷彿とさせます。各国からの制裁が果たしてどこまで功を奏するか、注目したいところです。

メルケル前首相は恐らく自伝は書かれないと思います。この評伝、フランス人ジャーナリストの手によるものですが、その分一層公正で正確な内容であると推測します。ぜひ一度お読みになってみてください。