人工知能が人間を凌駕することは可能なのか? 映画「ターミネーター」の世界は、果たしてやってくるのか? この究極の問に、明解な「NO」という答えを言ってくれているのが、この本”AI vs 教科書が読めない子どもたち”です。
1は何度かけ合わせても「1」です。コンピューターのやることは、人間のやることが、「1+α」だとすると、1より小さいので、たとえ「0.9999999」の9が無限に続く数字だとしても、これを果てしなくかけ合わせれば、限りなく「ゼロ」に近づいていきます。だから、AIが人間を超えることはありえません。
ということらしいです。確かに、機械は電気が通じている「1」か通じていない「0」しか判断できず、2進法(むか~し習いましたねぇ)の演算しか結局できないのだから、突き詰めれば、人間に機械が征服されることはないのでしょう。
でも、安心してはいられません。この本が語っているのは、今の日本の教育は、人間を大量の人工知能に育て上げているようなものだ、という警告です。機械にできないこと、数式で表すことができない情緒的なこととは、例えば、”cold drink” という言葉を見て、「寒い飲み物」ではなく「冷たい飲み物」と、人間なら普通にできる判断力です。
テクノロジーの発達により、世界は快適になりました。単純作業は機械がやってくれます。駅で切符を改札するのは、機械の仕事になりました。かつては、各駅に改札員が立っていたものです。
では、今、自分がやっている仕事は、果たして無事でしょうか? 将来 AI に取って替わられることはことはないでしょうか?
教科書をちゃんと読むことができない子どもが大勢いるという事実は、私を文字通り「戦慄」させました。”偶数と奇数を足し合わせると、必ず奇数になる”という、ものすごくベーシックな命題の証明を、導き出すことができない大学生が大勢いる、と言われて、「え、どうやるんだっけ?」と思った方。
2a + (2b+1)=2(a +b)+1
という数式を理解できるなら大丈夫です。もしちんぷんかんぷんだったら、少し算数の復習をやった方がいいかもしれません。
スマホで「この近くのおいしいイタリアンのお店は?」と尋ねる方は多いでしょう。ところが「この近くでまずいイタリアンのお店は?」と尋ねても、スマホは同じ回答をするそうです。おいしい、と、まずい、が「反対の意味」ということが人工知能では理解不能らしいです。
今やチェスや将棋の世界でも、A I は人間を超えたと言われています。パターン認識さえ学習させれば、あとは超高速で演算し、答えを導き出せる、それが人工知能です。翻訳機能も膨大な例文の入力によって成り立っています。新しいことを作り出すことは、機械にはできません。インプットしたことを加工するだけです。
東ロボくんは MARCH (明治大学、青山学院大学、立教大学、中央大学、法政大学)の一部の学部には合格できる水準まで、開発が進んでいるそうです。(東ロボくんについては、この本を読んでお確かめください) A I に負けない、ではなく、A I ができない分野の仕事を、これから見つけていきましょう。それほど難しいことではないはずです。機械は人間が作ったのですから。