「目の見えない白鳥さんとアートを見にいく」を読みました。

全盲の美術鑑賞者・白鳥建二さんと美術館に行く。

そもそも「全盲の美術鑑賞者」という肩書に?????となるのが、普通の反応ではないでしょうか?

著者の川内有緒さんは、大学の芸術学部で学び、アメリカやフランスでの生活体験もあり、美術に造詣が深く、なかなか興味深いバックグラウンドの持ち主です。

友人マイティからの「白鳥さんと作品を見るとほんとに楽しいよ!」という誘いに乗っかり、この著書ができあがるまでの壮大な《アートを巡る旅》が始まりました。

目の見えない人が、どうやって絵画を楽しむのか、私も興味津々で、かなりボリュームのある本を飽きることなく丁寧に読み終えました。

白鳥さんは視覚が生まれながらになかった方で、人生の途中で失明した方と、なんというか「思考が違う」のです。それは例えば私自身、見えることが《当たり前》で、モノを見たことがない!というシチュエーションに想像が至らないという、まあ、大多数の方は同じ感覚なのではないかなあ、と思ってしまうのですが、蔑んだり異端視するわけでは決してありません。

だから、という接続詞も陳腐ですが、白鳥さんとのアート鑑賞は、とても重く深いテーマを投げかけてきます。少なくとも、川内さんのこのノンフィクションにかけた膨大なエネルギーは、じわじわと心の深い所に伝わってきて、私に大きな感動を呼び起こしました。

優生思想という重いテーマを著者自身が内に秘めていて、単なる「変わった体験話」にとどまりません。

近々、どこかの出版社か何かの○○ノンフィクション大賞を受賞する予感がします。妙な先入観を取っ払うのにうってつけの、素敵な1冊ですよ。