重いテーマを笑い飛ばす? 男前作家・篠田節子さん

検査・手術・乳房再建、同時進行で認知症の母の介護

直木賞作家・篠田節子さんが、乳がん発覚から術後までの怒濤の日々を、持ち前の取材魂をもとにユーモア溢れる筆致で綴った、闘病&介護エッセイ。

篠田さんの軽快な文章、卓抜な言葉選びや比喩の引き方は、私が日々お手本にさせていただいているものです。「右胸が叶恭子です」など、分かりやすくてウィットに富んだ表現には、思わず笑いがこみあげます。かと言って、決してふざけてはおらず、重いテーマである、ガンと介護を、理路整然と冷静な目で、書いておられます。

私が初めて篠田さんの本と出会ったのは、ドイツ在住時でした。一時帰国した時、日本語の活字に飢えていた私は、古書店に飛び込み、文庫本を買い漁りました。その中にあったのが、直木賞受賞作「女たちのジハード」。賞が発表された頃、私は馬車馬のように働いていたため、好きな本を読むどころか、ニュースを見る時間もろくになく、かなり遅い邂逅でした。

何度も読んだので、かなりくたびれた一冊です。

ドイツに持ち帰って、たっぷりあった自分の時間の中で、この本を何度読み返したことか。登場人物の中でも、特に「康子」が年齢的にも境遇的にもシンパシーを感じる設定でした。励まされ、勇気づけられ、ネガティブな心境になると、状況に見合った章を開いては、どっぷり活字の世界に浸ったものでした。

篠田さんの徹底した取材に基づいた作品群には、とても重厚なものも数多くありますが、いつも感動させられます(表現が陳腐だなあ)

”介護のうしろから「がん」が来た”は図書館で借りた本です。すみません。文庫になったら、ぜひ買いたい一冊です。あとがきの「その後」がさらに加筆された文庫版になるまで、手元に置くのはしばらく待ちます。よろしくお願いします。