ラブコメの王道・図書館戦争シリーズ

コミックや映画にもなった図書館戦争シリーズ、有川浩著

図書館に貼られた《図書館の自由に関する宣言》というプレートから着想を得て書かれたという「図書館戦争」「図書館内乱」「図書館危機」「図書館革命」

公序良俗を乱す表現を取り締まる「メディア良化法」やら図書隊やら、有川浩さん(ペンネームを最近、有川ひろ に改められました)が大切に思ってやまない「本」をめぐる極上エンターテインメント。

映画では堂上篤を岡田准一さん、笠原郁を榮倉奈々さんが演じておられ、まさにはまり役でした。この小説を読むと、脳内では岡田&榮倉がバトルとロマンスを繰り広げ、妄想が止まらなくなります。

ところで、頭の中で映画が展開する状態を指す言葉をドイツ語で Kopfkino コプフキーノ と言います。KOPFは頭、KINOは映画館の意味です。脳内空想・妄想。なかなか面白い表現ですね。

図書館戦争シリーズの文庫版の巻末には、稀代の読書家にして書評家でもある俳優・故児玉清さんと有川ひろさんとの対談も収録されています。

有川ひろさんの文体は、少女チックさと漢字がいっぱいの堅苦しさ(?)が同居した、独特の雰囲気を醸し出していますが、ライトノベルのようでラノベには分類されないのですね。

作家ご本人もご自分の立ち位置について「ビミョー」であるとおっしゃられていたことがあります。私も有川ワールドには不思議な引力で取りこまれていきました。なんというか、コミックと文学の狭間に入ったような気分でした。

児玉清さんが強く推していらっしゃったので、救われた気分になったのも、正直な気持ちです。

純文学を読む人が高尚でエライとは思いませんが、いい大人がラノベなんか読んで、という、ちょっとした劣等感的な感情を、有川さんの本は呼び起こすところがあるのです。

ハイスクール時代にこの図書館戦争シリーズに出会っていたら、と思ったりもしますが、有川さんは私よりお若いので、このIF(イフ)は不可能なんですね。

何はともあれ、極上のエンタメであることは間違いありません。児玉さんのお墨付きです。軍事お宅、本好き、ラブストーリー命。いろんな人に楽しんでいただける充実の4冊です。