海が舞台の壮大なドラマ「桃色浄土」坂東眞砂子

1994年初版の本です。自然の厳粛さと人間の欲の醜さを存分に描いた長編伝奇小説です。

《珊瑚の海の向こうには、愛する死者が生き返る伝説の国がある》

時代設定が少し古いですが、その分、怪奇現象や祟りといった非科学的なことがリアルになり、物語の世界にどっぷりはまることができる内容です。

この本の紹介者は「桃色浄土」というタイトルから、淫靡な小説を想像したそうですが、有吉佐和子さんの名著「恍惚の人」も出版された当時は、大いなる勘違いを生んだそうです。

認知症問題(当時は痴呆症と呼ばれていた)にいち早く注目し、その実態をリアルに描き出し、映画化もされました。白黒フィルムでカラー化をしなかったのは、森繁久彌氏の弄便の演技が真に迫りすぎて、天然色では見るに堪えないと判断されたからとか。

タイトルが鮮烈で誤解を生むのはご愛敬ですが、不当に人を貶めたり、ヘイトを助長するようなネーミングは、断固として固辞したいと思います。卑猥なタイトルの本で、書店の女性店員を苛めるという輩がいたそうです。低俗ですね。このブログの読者には、そんな子供じみた真似をする方はいないと信じておりますが。