オデッド・ガローの「格差の起源」歯応えのある名著でした。

原題を訳すと「人類の旅路」となるオデッド・ガロー氏の大作。監訳を柴田裕之氏がなさっており、信頼を置いて読めました。そう、あの、ユヴァル・ノア・ハラリ氏の著書の訳者でいらっしゃいます。おつむの構造が特別なんでしょうかねえ。難解な内容をしかも英語で読めるスーパー・インテリな脳みそに、心から敬服してしまいます。

格差とか不平等とか、あるいは貧困とか。この世の中の秩序を作り、その繁栄を享受し、胡坐をかいているのは、欧米系の白人! 私自身は在独中に黄色人種ゆえのわりなき差別に、時に憤って闘いを挑み、ほとんどは諦めて屈辱に耐えていました。

絶対に身につけるべきは、教育です。学問です。知識・教養です。

アメリカ人は、世界の人は皆すべて自国を知り、英語を理解し、USAにひれ伏す、と考えている、横暴な国民が多い!

今、徐々にパワーバランスが崩れようとしていますが、次の大統領選の結果如何では、アメリカの衰退が顕著になるのではと、私は勝手に憶測しています。

現在、繫栄している国々で実権を握っているのは、元々の土着人を追い出したり隷属させたりした侵略者がほとんど。しかも、それぞれの風土に合った生活を劣悪とみなし、大量生産大量消費社会を押し付け、自然の摂理をぶっ壊してしまった。

線状降水帯もゲリラ豪雨も、自然を支配できるなどという莫迦な自惚れが招いた、自然からの強力なしっぺ返しです。

そして、格差のはびこる世界で、自然を破壊した張本人の資産家たちは逃げおおせ、自然を大切に地味に生きてきた貧困層が被害に遭う。

ものすごく「間違ったこと」がまかり通っているのに、水戸黄門もウルトラマンも半沢直樹も現れてはくれないのですね。

「格差の起源」は、貧富の差が生まれた理由を説明してはいますが、解決策はきちんと提示されてはいません。この本で歴史を学んだ読者が、自分で考えるべきことなのでしょう。量・質ともに重い本です。