ヌーハラと鼻かみ、どっちが不快?

ナナメの夕暮れ 若林正恭著

若林正恭さんと言えば、オードリーの春日さんの相方で、どちらかというと地味なイメージでしたが。文才豊かな方なのですね。「ナナメの夕暮れ」面白く読みました。

タイトルと本がかけ離れているようですが、ヌードルハラスメントのことが取り上げられている章があったので、ちょっとドイツネタを思い出し、書いてみる次第です。

麺類を盛大に音を立てて啜るのが、アジア全般なのか、日本だけなのか、あまり詳しくないのですが、欧米でははっきり「嫌われる」と断言できます。麺だけでなく、熱いお茶やコーヒーなども同様で、とにかくあの「ズズズ」という啜る時に発する音は BAD MANNER  であり、子供の頃から厳しく戒められると、ドイツ人が教えてくれました。

さらに、鼻をすする音も「ダメ」です。冬に寒い外から暖かい電車などに乗り込むと、ついつい鼻水が出て、日本人ならすすってしまうところですが、ドイツ人は 「Putzen Sie die Nase! プッツェン ジー ディー ナーゼ! 鼻をかみなさい(直訳は”鼻を掃除しなさい”)」と言ってティッシュペーパーを突き出し、不快感をあらわにします。私は事前にリサーチしていたので、体験していませんが、ドイツの会社の日本人上司が、突きつけられたことがあると、不愉快そうに話していました。身体から汚いものや悪いものが出ていくのを止めてはいけない、と考えるのだと、ドイツ人の友人は言っております。

さて、そのドイツ人の鼻のかみ方ですが、これはもう豪快です。トランペットを吹く、というのが、鼻をかむの別の表現だったり、ある女性が盛大な音を立てて鼻をかんでいると、「彼女はエレファントね」と言ったりします。

音は個人差がもちろんあり、ぶお~、だったり、パオーン、だったり、まあ、ウルサイですね。ちなみに日本では「チーンしなさい」と言いますが、そんなカワイイ音はききませんでした。

で、ハラスメントという言葉にくいつきますが、食事の時に人前で鼻をかむ行為を失礼だと思わないのが、どうやら欧米流のようです。少なくとも、私はドイツ旅行中、レストランで相席になった時、目の前で「ぶお~」と鼻をかまれた経験が一度ならずあります。

げっぷやおならは、人前ではハズカシイ行為と、欧米では思っているようですが、鼻をかむのは構わないというのが、どうも私は理解に苦しみます。出物腫物ところ選ばずじゃないですが、あるアジアの国では、食後にげっぷをするのが、おいしかったことを示すマナーになっているそうで、ドイツで苦労していました。条件反射のように身についてしまった生理的習慣を治すのは、一筋縄ではいかないでしょう。

なんだか汚い話ばかりで恐縮です。若林さんの本は、行間からセンスの良さがほどよくにじみ出る、読みやすい本です。同じ芸人にして芥川賞作家の又吉直樹さんの本とは、ジャンルが違い、片や芸術作品、片や自己啓発本という感じでしょうか。

あ、こんな考え方をするのは自分だけじゃなかったんだ、と、精神安定剤的な効果を発揮する(その一方、面倒くさいやつ、と思わせる箇所もあるかも)一冊です。タレント本とは一線を画しています。リラックスしたい時に、ぜひどうぞ。