「なぜ日本社会では女性が輝けないのか」具体的な説明です。

著者の大島愼子(ちかこ)さん。ルフトハンザドイツ航空での長い職務歴がおありで、ドイツと日本の働き方の違い、特に女性がそれぞれどんな立場にあるか、克明に論理的に綴ってくださっています。

日本社会では、評価も批判も、例え改善の目的で提案したことでも、否定的な内容は「悪口を言われた」などと感情的にとらえる傾向が強い。これはある意味、ひじょうに耳の痛い指摘です。

日本人の発想は、ロジカルになるよう子供の頃から訓練しないと、議論が議論にならないのです。「朝まで生テレビ!」で声が大きく強引な人が周囲を黙らせる、というのが分かりやすい例。ディベートの正しいやり方を学んでいないからですね。

そして、この傾向は男性により多く、女性がしゃしゃり出ようとすると(と男性はとらえるのでしょう)ひと言「黙れ!」と押さえつけられるのです。

1962年に池田隼人内閣が推進した政策は、経済発展下の日本では女性は家庭に入ることが是とされる風潮を生みました。いわゆる「専業主婦」はこの時代に強い市民権を得たようです。

女性は管理職に向かない。このようなジェンダーステレオタイプが蔓延しているのも、専業主婦礼賛志向が影響しているように思えます。

リクルート時代、金曜日は花金と言われ、仕事が終われば土日は休むことができました。金曜の夕方、それぞれの社員には恋人からの電話が職場にかかってくることも多く(携帯電話なんてなかった!)、私も彼氏からの電話を偶然自分で取ったことがありました。

その時、鮮明に印象付けられた出来事というか、自分の反射神経というか、この本でクリアに説明された事象があります。

「えらいよそゆきの声出して」「どっからそんな高い声出るの?」と揶揄されたのです。これはもう《甘え》だったのですね。

日本では、高い声で話すことが「少女みたいでカワイイ」とみなされ、欧米では「幼稚で子供っぽい」という評価になる。私自身、声が高くなったり低くなったりするのは、本能的な反応のようで、説得したい時は確かに低音でしゃべっています。

私はかなりお喋りな方ですが、【沈黙は金】という言葉の功罪については、それなりに意見があり、これは著者大島さんの意見と一致しました。

日本の男性は、饒舌でないことが評価されてきたので、理路整然と話す訓練ができていない。そのため、自分の考えをロジカルに否定されようものなら、「うるさい、だまれ!!!」と怒鳴ったり、相手を無視したりという行動に出る。図星の方が結構多いのでは?

とても見識深く、男性社会の日本を、切れ味の良いナイフでスパッスパッと切って見せてくださっているような、興味深い本でした。日本の女性たちに贈るエールとして、ぜひ手にとってみていただきたいです。