本屋大賞2022年受賞作「同志少女よ、敵を撃て」を読む

ウクライナとロシアが闘っている今に、この本が出版され、直木賞候補に上がり、アガサ・クリスティー賞と本屋大賞を受賞したという事実。これは著者にとって僥倖だったのか、それとも読者に対するなんらかの警告だったのか。

舞台がソビエト連邦、敵がドイツという設定が、史実に基づいたフィクションとは言え、個人的には心苦しい内容でした。

どんな事情があるにせよ、戦争が肯定されてはならない、と心底から思います。結果的に勝者が正義となり、敗者が悪とみなされ、事後決定の法律で裁かれていく。プーチンにはなんとしても早く降伏してほしいと願っていますが、負ければ戦争犯罪人として、世界中から非難囂々に祀り上げられることは自覚されているでしょうから、最後まで悪あがきをなさるのでしょう。

話が逸れました。女性のスナイパーによる精鋭部隊。一部の登場人物は歴史上実在したようで、劇画チックな内容にリアリティが盛り込まれ、重厚なストーリーを成しています。暴力とかスプラッタとかは苦手なのですが、戦争の悲惨さを骨身に染みさせ、平和の大切さを痛感するためにも、この大賞受賞作は重責を担っています。

男性作家の筆によりながら、女性のポジションを考え抜かれた内容です。スリリングでバイオレンスなエンタメ作品。戦争がリアルタイムで起こっている今こそ、読むにふさわしい大賞受賞作と言えるかもしれません。