樹木希林さんとの回想録 浅田美代子さんの「ひとりじめ」

樹木希林さんという大女優の生き方を敬愛してやまない私としては、この浅田美代子さんの「ひとりじめ」という回想録は、《うらやましい》の一言に尽きました。「ひとりじめ」。なんともうまいネーミングであり、またあまりにピッタリし過ぎています。文章も、奇をてらわず、じっくりじんわり《樹木希林愛》が伝わってきます。

芸能界という特殊な世界に身を置きながら、芸能人然というそぶりを見せない、お二人の人柄がとても好ましく、生き方全部ひっくるめて【見習いたい】と思わせます。

私の浅田美代子さんに関する記憶は、小学生の時にさかのぼります。1学年上にとてもカッコイイ男子がいて、同級生の女の子が交際を申し込んだ(早熟ですね)のですが、

「僕の理想のタイプは”浅田美代子ちゃん”みたいな人だ」

と言って振られてしまったという、センセーショナルな事件がありました。

当時の芸能界は今よりも「虚飾」が激しかった世界で、浅田美代子さんは好きな食べ物を”イチゴ”とかなんとか言わされていたようですが、後年、本当は焼き肉が大好きなのに、と本音を語っておられたのは、ご愛敬ですね。アイドル(偶像)のイメージ戦略が強かったあの頃、自分に正直でいたい浅田さんには、葛藤の多い日々だったことでしょう。

今は保護犬の救済活動にも力を注がれ、樹木希林さん亡き後も、精力的に頑張っていらっしゃる姿は、とても頼もしく映っています。

林真理子さん、中園ミホさんのご尽力があって生まれたこの本。芸能界の覗き見ではなく、素敵な人間の生き様を見せていただける貴重な1冊として、心からご推薦申し上げます。