悪医 自然体で生きる

悪医 久坂部羊著

久坂部羊先生は医者と作家、どちらが本業なんでしょうか? 

この作品は作家の王道”書きおろし”です。医者稼業をしながら、連載をもつのは、確かに大変な気もします。医師として安定した収入があるから、できるわざと言えるかもしれませんね。

「悪医」には、患者に誠実であろうと思っている若い外科医と、どんなに副作用がつらくても治療を止めたくないという壮年の胃がん患者が、交互に対比されるように描かれています。私が言うのもおこがましいですが、完成度が非常に高いと思いました。

私が久坂部先生の本で初めて読んだのが「院長選挙」。これはミステリー要素も入ったお気楽(?)な内容というか、かなりおふざけの度合いが濃い作品で、以来少し先生の作品は敬遠しておりました。

コロナ禍で医療小説がクローズアップされていたのを機に、書評が良かったので手にとってみたのですが、「悪医」は医師・患者のどちらの心理も克明に書き分けられていて、はまりました。

癌になるのは国民の2人に1人とも言われ、この本は正に万人に関心のあるテーマを扱っていると言えるでしょう。

癌は早期発見で治るなどと喧伝されており、年に1回の健康診断が励行されていますが、私はここ数年ほとんど何もしていません。血液検査を2年に1回受けているくらいです。

お医者様の書いた本をたくさん読み過ぎたせいか、耳年増になったようで、検査とか治療に対してもひじょうに懐疑的です。

まず、日本人の検査好きは、MRIやCTなどの機械が多過ぎることに原因があるように思われます。マシンの減価償却と、そこからあがってくる利益(医療報酬というべきでしょうか)が普通にしていてはマッチせず、過剰に検査をしないと投資を回収できない。そのため被ばくの危険の高い検査が行われ、またそれが原因で癌患者を増やしている。。。

というのは私のうがった見方でしょうかね。

ウチの家系が癌になりにくい血筋のようなので、ガン保険も一切加入せず、50代ですがガン検診も一切受けていません。もし万が一、癌になったとしても、麻酔をかけて開腹し、切り取って輸血して、という一連の治療(手術)を思うと、リスク回避のために「何もしない」という選択肢をとるつもりです。

抗がん剤治療も副作用がつらそうだし、私はあくまでも「自然体で生きる」をモットーにしようと思っています。

実際のところ、医師の方々ご自身は、自分が癌になった時、どのような治療方針をとるおつもりなのか、しっかり訊いてみたいですね。

本当の悪い医者とは? 良医に巡り合うために、かなり参考になる、傑作エンターテインメントとして、おすすめいたします。