心の闇を暴くミステリー「十字架のカルテ」

ミステリーの新境地

またまた、医師の手による小説。3年連続本屋大賞にノミネートされている、実力派作家・知念実希人氏の最新作「十字架のカルテ」を読みました。

心の闇を暴く精神科医・影山司。切れ者です。

《精神疾患による幻覚や妄想等に囚われた結果として行われた犯罪行為を司法は罰しない。しかし、この条文に従って無罪や不起訴処分になった触法精神障害者の処遇については、刑法に全く規定はない》

この司法のブラックボックスに、この小説の様々な伏線が絡まります。

詐病という言葉が、目新しいのに、しっくり頭になじみます。漢字の効用ですね。本当は精神病ではないのに、さも病気であるかのように偽った行動をし、減刑あるいは無罪になろうとする。。。

精神科医の仕事も大変です。レントゲンや血液検査など、目に見える診断基準はなく、人の心を読むという心理戦。この小説の中でも、その難しさが丹念に綴られています。

あまり書くとネタバレになるので、この辺りで止めておきますが、知念先生は精神科医なのでしょうか? ディテールの細かさ・リアルさが凄い! ぜひ他の作品も読ませていただきたいと思える、緻密なミステリーとの出会いでした。