使ってあげる。着てあげる。

短編集「一人称単数」 村上春樹著

特にハルキストというわけではないですが、村上春樹氏のご著書は、新刊が出る度に図書館に予約を入れます。林真理子さんが絶賛されていますが、とにかく文章が上手い。この「一人称単数」は8作からなる短編集ですが、絶妙の比喩と見事な切り口が冴えわたっています。

書きおろしの短編「一人称単数(本のタイトルと同名の作品)」に、

なんとなくそれらの衣服に対して「申し訳ない」という気持ちが湧いてきて、

という下りがあり、思わず《ビンゴ!》と共感してしまいました。

身の周りのものをかなり断捨離して、なるべくものを持たないようにしているということは、以前も書きました。ミニマリストは無理ですが、自分の目が届く範囲内に所有物を限定し、そしてそれらを「使ってあげる」。

モノには、作った人の魂が宿るというか、少なくともイイモノには気持ちがこもっている、と感じています。だから、服はなるべくまんべんなく着る。特に着物は着て行くチャンスがなかなかないので、自分でクリエイトして、人様にお見せする。

着物については、着付けを忘れないようにするため、という理由もありますね。日本語の授業やドイツ語の講義に着物で行くと、学生や生徒さんにとても評判が良く、「着付けがヘタなので、あまりじっくり見ないように」とけん制しておいて、数少ないアイテムを披露しています。

以前、OffHouse で素敵な柄の小紋を見つけたのですが、襟のところに目立つシミがあり、思い切ってワンピースにリフォームしてもらったことがあります。その着物(小紋)のお値段が1080円(消費税が8%の頃!)という破格だったので、”布を買ったと思えばいいじゃん” と。裏地もそのままワンピースの裏地として再利用できたので、良い買い物だったと思っています。

そのワンピースも、着ていくところがなかなかないので、今度のコンサートでお披露目するつもり。友人に音楽家が多いというのは、こんな時に《便利》(失礼!)ですね。普段の野暮ったい服装を知っている友人達は、私がドレスアップすると喜んでくれるので、オシャレの”し甲斐”があります。

食器も、お客様用とか区別せず、いいものを普段使いにを心掛け、割らないように大事に使います。お気に入りの赤ワイン用のグラスも、6脚に不公平がないように、順番に日の目を見させてあげて。

せっかく持っているものを、使わないのはもったいない。いざという時、という考えも大事ですが、それぞれのモノに宿っているスピリッツを活かしてあげるためにも、なるべく手に取ってみよう、というポリシーで生活しています。

皆さん、いいものをしまい込んでいませんか? もったいないですよ。