1964年東京オリンピックの時、オシムさんに梨を振舞ってくださった方に感謝です。

日本では、とかく野球とサッカーが対比されます。

いわく、お金が一番かかる球技とかからない球技(圧倒的に様々な道具が必要な野球。ボール1個でOKなサッカー)。

いわく、ルールブックが一番分厚い球技と一番薄い球技(野球のルールを覚えるのは大変! 一方サッカーは、GK以外は手を使っちゃダメ、くらい?)

私はかつて筋金入りの野球狂でした。夏の高校野球のシーズンには、新聞片手に本当に一日中テレビで野球観戦か野球に関するニュース・ドキュメンタリー(当時、熱闘甲子園というドラマチックな番組がありまして)を真剣に観ていたものです。

サッカーは J リーグがスタートした時、どうやって民放はコマーシャルを入れるんだろうと、おバカなお節介を焼きましたが、ワールドカップの世界的知名度、日本のポジションなどを知り、かなり熱心に観戦するようになりました。

中でもオシム監督の素晴らしさ。彼の語録はよくマスコミに取り上げられていましたが、そのバックグラウンドを知り、人となりを垣間見ると、親日家になってくれた奇跡に、嬉しくてならなくなるのです。

冒頭の梨を振舞ってもてなしてくださった農村の見知らぬ方には、心からお礼申し上げます。

サラエボで生まれ、戦争で家族と引き裂かれた過去を持つためなのか、厳しさという愛情のある方です。選手が自分で考えることに向けてのサポートを惜しまない。

ドイツ語に「根っこと羽根 die Wurzel und der Flügel ディー ヴルツェル ウント デア フリューゲル」という言葉があります。親が子に与えるべきもの。それは、しっかりした基礎、そしてその後は、本人の意思で自由に羽ばたいていけばよい。

そんな子育てに通じる信念を、オシムさんは監督業を通して選手たちに惜しみなく与えていらっしゃった。深いですねえ。

ドイツ語が話せた方だったので、ぜひお目にかかって、ほんの少しでも言葉を交わしてみたかった。今年の5月に亡くなられてしまいました。残念無念です。

「オシムの言葉」ミズノスポーツライター賞 最優秀賞受賞作品。オシムさんを知っている方も知らない方も、必ず感動できる名人物伝。ぜひお読みください。