海堂尊氏が書く感染症パニック

ナニワ・モンスター 海堂尊著

またまた医師作家の作品です。「チーム・バチスタの栄光」で華々しくデビューし、ヒット作を量産し続ける海堂尊氏。

この「ナニワ・モンスター」は2011年発行ですが、感染症を政治にからめたメディカル・サスペンスの傑作です。

チーム・バチスタ以来、登場人物をスピンオフさせながらの連作に続く連作で、いずれも面白いのですが、私のお気に入りのキャラクターは、なんと言っても”厚生労働省大臣官房秘書課付技官 白鳥圭輔”。高級ブランド品に身を包みながら、その中身はさながら二頭身的で、たまごっちをあやつりながらも、的確に真理をつく。小説ならではの奇特な人物です。

ドラマ化された際、この白鳥を誰が演じるかで注目していたのですが、仲村トオルさんが配役されたので、残念ながら興味がわかず、テレビは拝見しませんでした。

チーム・バチスタの栄光 海堂尊著

「チーム・バチスタの栄光」は『このミステリーがすごい!』大賞受賞作で、リアリティとコミカルのバランスが最高です。「ナニワ・モンスター」にも”白鳥”という登場人物がいて、同じ白鳥かな、と期待してしまいましたが、何分わずかな出現(?)で、面白さはあまり発揮されていません。

ただし政治や司法などが絡み、壮大なスケールのプチパニックが、現代のコロナ禍に少し通じるところがあるかもしれません。経済封鎖など設定は違いますが、コロナパンデミックを予言したかのような表現もあり、興味深いおはなしです。

海堂ワールドにはまって、医療小説にどっぷりつかってみるのはいかがですか?未体験の方なら、かなり長く本の世界に身をあずけられます。エンターテイメントの好きな方には迷わずおすすめです。