ケーキの切れない非行少年たち

丸いケーキを3人に等しく分ける。そんな他愛もないことができない少年少女たち。知的障害がもたらす弊害や、引き起こす犯罪に、読んでいてやるせなくなりました。

著者は精神科医であり臨床心理士でもあり少年院での法務技官の経験もある、少年心理分析のスペシャリスト。認知力が弱く、単純な図を写すことすらできない、全人口の10数%いるとされる「境界知能」の人々に焦点を当て、彼らを学校・社会生活で困らないように導く超実践的メソッドを公開しています。

少し複雑な正方形に近い図を、少年犯罪者にそのまま写すように言うと、出来上がった図は長方形になっている。著者はこれを「彼らには世の中が歪んで見えているのだろう」と推測しています。同じ図を見た教官たちも、「これならいくら説教しても無理だ。もう長く話すのは止めよう」と言うくらい、衝撃的な結果でした。この図を見るだけでも、この本を開く価値があると思います。

私が憂慮しているのは、今後、外国人労働者が増加し、義務教育を受ける権利を持たない彼らの子供達が、将来無教育のため犯罪に走るということです。そんな悲劇を産まないためにも、せめて自分が教えている生徒たちには、健全でまっとうな社会人になってもらえるような、正しい授業をしなければ。責任重大です。

日本の憲法はもちろん日本人のためにあるわけですが、外国人の労働力によって今後の日本が支えられていく現状を考えると、純日本人だけが守られる法律などは、どんどん見直されなければならない、と真剣に思います。

「ケーキの切れない非行少年たち」はあくまでも境界知能の少年少女を救うために書かれている本なので、教育者、特に小中学校の教師の方には強くおすすめします。犯罪者を納税者に。壮大な話のようですが、地道に努力すれば、犯罪者も被害者も減らすことができ、経済効果も上げることができるはずです。