「わかる」とはどういうことか 認識の脳科学 山鳥重先生による懇切丁寧な書

「あ、わかった!」という瞬間は、なかなか嬉しいものです。

不明な点がクリアになった。ず~っと探していたパズルのピースが見つかった。アホから、少しカシコイに前進!

いろいろな達成感とかカタルシスとかありますが、その「分かった」を具体的にわかりやすく説明すると、こんな複雑怪奇な文章が組み立てられるんだと、恐れ入ってしまうのが、この山鳥 重先生のご著書です。

「認識の脳科学」という副題がありますが、なんというか《あたりまえ》と思えるようなことほど、文章化して読み手に理解させるのはムズカシイんだなあと、あらためて悟りました。

よく、年齢を重ねると

「ほら、アレよ、アレ」

と、特に固有名詞が出て来ず、指示代名詞ばっかりの、他人が聞いたら全く意味不明な会話が、親しい者同士の間では成り立ちます。

私は母に 「ちゃんと主語を言わんと分からん!!!」 と生意気に言う娘。

でも、母の話が、気安さという空気の中で、自分の世界だけのストーリーになり、私が時々「?」となるのは、実際よくあるのです。

聞き流してテキトーに相槌を打つという方法もあるのでしょうが、そうすると、「前に話したやん」と、さも私に呆けが始まったかのように言い募ることがあるので、ここは予防線を張らなければなりません。

知覚を呼びさまし、相手の話を傾聴し、こちらの話もちゃんと聞いてもらう。そうすることで、真のカンバセーションが成立します。

難しそうに見える本ですが、なかなか含蓄のある分かりやすい本。読んでいると周りから”賢そう”に見られるというプラス効果もあるちくま新書です。