輝く日の宮 丸谷才一著 旧文体の絶妙な面白さ

大正生まれというと、今でも矍鑠とご活躍の佐藤愛子先生を真っ先に思い出しますが、丸谷才一先生も大正のお生まれ。

だからなのか、頑固に旧文体を貫かれていらっしゃいました。文体というのは、自分になじんだ道具みたいなものですから、もう手放せなくなってしまっていたのでしょう。

ちょっとドイツ語にワープします。

ドイツ語には正書法というのがあって、2006年から新正書法が適用されるようになりました。

ドイツ・オーストリア及びスイスでは約7割の国民が母語として使っているドイツ語ですが、国によって表記(綴りなど)に違いがあり、2006年から全てを統一させることになったのです。

具体的にはエスツェットという ß の文字に関する表記のルールが、より論理的になったというか。

普通のアルファベットにはない文字なので、打ち出せない時は SS で代用します。

詳しいルールをここで説明しても、多分面白くないと思うので、ここでは省きますね。

実は、この「輝く日の宮」の中に、英語の旧文体の表記が出てきて、私には別の意味で興味を引きました。

ご存知のない方に説明しておくと、ドイツ語は名詞の頭文字は全て大文字表記なんです。

そして、英語の旧文体も名詞の頭文字が大文字になっていて、ああ、ゲルマン語のルーツが現れているなあと、すごく感心してしまいました。

日本語の表記は、私の苦手だった古文の文体や、ござ候みたいな古式ゆかしき時代劇調やら、言文一致による表記の統一など、その変化がとても大きく感じられます。

丸谷先生は、きっと手書きでいらしたんでしょうね。

作家には万年筆で手書きの方と、ワープロなどキーボード入力の方と、大きく二手に分かれるそうですが、漢字が分からなくても辞書を引かずにすみ、言葉があやふやでも、予測変換で AI に先導されるように書き流してしまうワードの便利さにはまると、どんどんアホになるような気がして、オソロシイです。

確かに編集作業が楽だし、腱鞘炎などにも、ペン書きに比べたら、なりにくそうに思えます。

なんだか話がどんどん逸れてしまいました。ま、いつものことですが。

丸谷先生の小説、実は初めて読みました。文体と同じく内容も古めかしいのではという先入観がありましたが、へぇ~っというくらい、現代的(というと語弊があるかなあ)なお話でした。

源氏物語に関する解釈が面白くて、古典の素養が全くない私には、この学説が、本当にある話なのか、丸谷先生による独自解釈なのか、全くわっかりませ~ん。でも面白かった!

たまには旧文体に親しむのも良いですね。新鮮な読書体験でした。