スーダンからやってきた全盲の青年が、日本語で本を出すまでに至る20年の奮闘

もしも視力を奪われたら。想像するだにオソロシイ。私なら絶望して命を絶つかもしれないくらい「見る・読む」という行為は、生活の大部分を占めています。

ところが、アブディンさんというスーダン人。全盲でありながら、日本語を完璧にマスターし、日本語で本まで出しているのです。

日本語教育学が専門の河路由佳教授がアブディンさんに興味を持たれたというのは、私も深く共感するところ。同音異義語が膨大にある日本語を、どうやって勉強し、身につけていったのか。この「日本語とにらめっこ」は、インタビュー形式で、とても具体的にメソッドが紹介されています。

語学学習の参考になるばかりでなく、体験記として純粋に楽しめるし、スーダン人から見た日本という文化比較論としても興味深い1冊です。

「見えないぼくの学習奮闘記」という副題がついていますが、神様はアブディンさんに視力の代わりに超人的な記憶力を授けてくださったのですね。いや、ご自分で努力して開発されたのでしょうけれど。

それにしても、明晰な頭脳・負けず嫌いで惜しまず努力を続ける精神力、そして並々ならぬ人徳が全編から感じ取れます。頑張る人にはちゃんと良い出会いがあり、大事な場面では助けてくれる人が現れる。私も困っている時にはエンジェルがどこかしらから手を差し伸べてくれました。きちんと努力していれば、神は見捨てない。絶望しそうになっても、ベクトルの向きが正しければ、必ず報われる時が来る。これは私の信念でもあります。

次は、アブディンさんの処女作「わが盲想」をぜひ読んでみたい。サコさんと並んで、ぜひお会いしたいアフリカ人です。さすが大陸。人材も豊富なのでしょうね。