真山仁が挑んだ渾身の”震災文学”「そして、星の輝く夜がくる」

真山仁著 そして、星の輝く夜がくる

阪神淡路大震災で被災された著者が、東日本大震災で起きた事実を踏まえて書いた物語。全てフィクションだそうですが、そのいきいきとした描写はとてもリアルで、涙なしには読めません。

折しも昨日は神戸の震災から四半世紀が経った、忘れられない日でした。私自身は、当時大阪に住んでいたので、かなり大きな揺れを体験しましたが、ライフラインは全て無事で、大した苦労はしていません。

あの震災で印象に残っているのは、ほぼ全ての報道が被災地について伝えるもの一色になり、全国民が自粛ムードになったことです。

私の記憶に間違いがなければ、ドラマもバラエティ番組も、しばらく休止になっていました。それ自体咎めるつもりはないのですが、どのTV局もより絵になる場面を探してヘリコプターを飛ばしていたのが、腹立たしかった。

交通が途絶え、支援物資が届かない最中に、なぜあのヘリコプターはテレビカメラではなく、水や食料を運ぶという人間的な行為ができないのかと、ずっと憤りながら、テレビを観ていた記憶があります。

各社が競ってショッキングな絵を探すのではなく、分担して、報道に使う運送力を、被災者支援に回すような、チームワークを図れないものかと。全ての民放が同じ放送内容になっていても、視聴者は文句を言わなかったのではないかと思うのです。

東日本大震災は、地震と津波と原発事故という、あまりにも過酷な災害でした。原発の問題は、あまりにも大きなテーマですが、真山氏はこの小説の中で、結論めいたことは書かず、読者の思考や判断に委ねる形で、話をフェードアウトさせています。

企業買収など、刺激的な文体が印象的な真山氏ですが、ご自身が被災者という立場でいらっしゃるので、この「そして、星の輝く夜がくる」を書かれた心境は、きっと深い「愛情」に満ちていたのでしょう。

全編にわたって、東日本の皆様への心からの支援の気持ちが伝わる、「震災文学」という金字塔。ハンカチでは足りません。タオル片手に読んでください。涙腺全開になること必至です。