たとえ書くたびに削除されても私は書く!
なんと凛々しい決意表明であることか。深夜12時の更新を1億を超える読者が心待ちにしたと言われる、武漢ロックダウン60日間の克明な記録を読み終わりました。
中国の狭量さには今更ながら辟易しますが、世界一人口の多い国家を統治するには、民主主義より一党独裁の方がふさわしいのでしょうか。方方氏の筆には、政府批判が頻繁に取り上げられています。
それにしても筋金入りの武漢礼賛者です。中国のメインランドにはまだ私は行ったことがないのですが、武漢の素晴らしさをここまで手放しで褒められると、一度訪れてみようかな、という気になります。
とはいうものの、新型コロナウイルスの発生源と目されている彼の地。世界の大混乱を招いている諸悪の根源が本当に武漢であるなら、恨み言を言いたい人はたくさんいるでしょう。
60日間の都市封鎖により、感染者が完全にゼロになるまで、1100万市民が軟禁状態を強いられた。その間に起きた悲喜こもごもが克明に綴られたブログです。マスク不足、食品逼迫、薬品欠乏など日々の生活に加えて、医療従事者が命を落とすという辛い事態。親類や友人に医者や警察官がいるので、かなり正確な情報が方方氏にもたらされたようです。
正しい情報と希望を棄てさせない文面で、多くの読者の心をつかんでいた方方氏は、文化大革命の洗礼をまともに受けた1955年生まれ。そんな彼女が、政府による20日間の隠蔽を糾弾し、正義感に燃えながらも冷静に武漢日記を書く作家になったという事実は、人間の成長の驚異と言えるでしょうか。なんだか上から目線的な文章になってしまいました。
方方氏の率直さは中国という国家の中では、災いすることが多いでしょう。この日記の閉鎖後も、論争は続いているようです。それでも彼女のような良識ある作家に発言の場を与え、中国に住む大勢の情報難民に正しい判断ができる材料を提供し続けてほしいと願います。
新型コロナウイルスの発生当時、「ヒトーヒト感染はない、予防も制御もできる」とのたまった中国政府系メディア。なんと罪作りな、未曽有の世界パニックを引き起こしてくれたことか。
時計を巻き戻すことはできませんが、武漢日記には、これから人類が立ち向かうべきウイルス、またそれだけでなく情報操作の脅威など、学習できるネタがいろいろ潜んでいます。
混迷の今を生きる全ての人へ贈る、希望の書です。