二人の薫

リヴィエラを撃て 髙村薫著

あるマンガで、子供が産まれた父親が、名づけに悩んでいるシーンがありました。LGBTで将来、性(姓ではない!)が変わることになっても、問題ない名前を考えているという、オチがついたマンガでした。

私が初めて髙村薫氏の小説を読んだのは、文庫本の「李歐」でした。単行本「わが手に拳銃を」を改題したもので、とにかく拳銃の描写がリアルなのです。著者の近影はなく、すっかり男性作家だと思いこんでいました。ところが、この「リヴィエラを撃て」にある写真を見てビックリ。理知的な女性ではありませんか。しかも「リヴィエラを撃て」はIRAのテロリストやCIA,MI5・6が暗躍を繰り広げる国際諜報戦。

空飛ぶ馬 北村薫著

一方、名前を出さない女子大生「私」と落語家・春桜亭円紫師匠が日常的な謎を解決していくシリーズは、北村薫氏によるもの。「私」を妄想モードで作家に仕立て、出会いを夢見ていた読者が多数あったそうで、こちらは実は男性作家です。がっかりした男性読者がかなりの数だったと、何かで読んだ記憶があります。

私はこの2人の薫氏が、なぜ性別が逆じゃないのかと、ず~っと不思議に思っておりました。言われてみれば、男らしいとか女性らしさとかは、それぞれがどう取るかで、どうでもいいことなんですよね。女性がハードボイルドな任侠の世界を描いても、男性作家がメルヘンチックな乙女心を書こうとも、それは書き手の好き好きです。

でも、髙村薫氏は拳銃や世界のスパイのことを、どうやって勉強されたんでしょうか? とても緻密な文章に圧倒されながら、いつも不思議になります。

かっこいい世界とほのぼのした世界、お好きなものをどうぞ。