「食は広州に在り」は邱永漢氏の造語にして本のタイトルです。

西洋館に住み、日本女性を妻にし、中国料理を食べるのが、世の男性の「理想の生活」なのだとか。日本女性はドイツでも映画・将軍の影響で大人気でしたが、中国人の目から見ても、魅力的とは。嬉しいようなハズカシイような。

邱氏のエッセイは、こと食べ物に関しては、手を抜くことなく、ひたすら美食の道を邁進している、といった趣です。材料にこだわり、調理方法は忍耐力を試されるような手間と暇がかかり。時々食べる美味しいものに、これくらい手をかけるのならわかりますが、いつもいつもこんなに一生懸命作っていたら、いくらなんでも疲れ切ってしまいます。私は「時々グルメ、普段はお茶漬け」で十分なんだけどなあ。

台湾生まれの邱氏の本には、漢字がたくさん使われています。一昔古い本という理由もありますが、漢字の国から来られた著者なので、文字への造詣もことさら深いのでしょう。

出てくるエピソードが、また面白い。何度か爆笑してしまいました。それは、ぜひお手に取って読んでいただければと思います。

閑話休題。

実は今、とある自治体のコロナワクチン接種の予約相談を受け付けるコールセンターで働いています。まずは高齢者が接種の対象なので、パソコンなどが苦手な方達の頼みの綱である電話への問い合わせは、切実な上に笑いと苦労が絶えません。

予約には接種券番号と生年月日がまず初めに必要なのですが、思いこみが激しく耳の遠いお年寄りからは、それを聞きだすのに一苦労。

「生年月日をお願いします」

「5月○日、□時からで」

「申し訳ありません、5月の予約はもう埋まってしまいました。それよりもお誕生日を教えていただけますか?」

「だから、5月○日、□時のXX会場でお願いします」

「すみません(叫ぶ)まず、生年月日を教えてください」

「(周りにいる人に向かって、なんか言うてはるけど分からん、と大声で訴えている)せやから5月○日がいいんです」

「すみません、ご本人ではなくてもいいので、他の方に代わってもらっていいですか?」

「(またなんか言うてはるわ、と訴えている)もう1回、接種券番号を言いましょうか?」

「ですから、生年月日を教えてください。お誕生日をお願いします!!!」

こんなやりとりがエンエンと続いて、もう喉がガラガラです。なんだか桂枝雀師匠の落語・代書屋を思い出してしまいました。声の大きくて耳の遠いおじいちゃん・おばあちゃん相手に奮闘しております。私の周りのスタッフも、私が何度も「お誕生日を」「生年月日を」と叫ぶのを聴いて、笑っておりましたが、いやあ、もう、大変です。

すみません。話がそれましたね。でも、今日はこのことを誰かに訴えたかったので許してください。ではこの辺で。。。