財務局に殺された赤木俊夫さんの妻の記

私は真実が知りたい 赤木雅子+相澤冬樹共著

大阪地検特捜部は森友学園事件の事実関係をすべて知っている。にもかかわらず、赤木雅子さんに対する態度は不誠実なまま。

なんとオソロシイことでしょう。官僚の隠蔽体質は今に始まったことではありませんが、それにしても正に「トカゲの尻尾切り」を絵に描いたような責任回避。読むと憤りを通り越して虚しくなるのが、この共著です。

赤木俊夫さんの言動をつぶさに見ていた妻・雅子さんによれば、「大変なことをさせられた」「内閣が吹っ飛ぶようなことを命じられた」「最期は下っ端が責任を取らされる」「ぼくは検察に狙われている」と怯えていたことをよく覚えているそうです。

まさに《官僚は国家マフィアとルビをふる》という「コロナ黙示録」に出てきた言葉がピタリとはまります。

問題の国有地は、当初、大阪音楽大学が7億円以上の値段をつけていたにも関わらず、森友学園には1億3400万円で売ったというのだから、誰が見たっておかしい話です。

麻生大臣の墓参の話もヒドイの一言に尽きます。雅子さんに大臣の墓参に関する問い合わせがきた際、即座に「来てほしいです」と答えたにもかかわらず、雅子さんに知らせず、実家の兄に電話。「妹さんは大臣に来てほしいと言っていますが、マスコミが押しかけてきて対応が大変ですよ。お兄さんはお断りするということでいいですね?」とまるで誘導尋問。兄はやむなく「それでいいです」と受け入れます。その上で「そういうことにしますから」と雅子さんに通告があり、

「遺族が来てほしくないということだったので伺っていない」と麻生財務大臣は国会で答弁。

言っていないことが、まるで事実のように語られ、それを理由に墓参に来ないという、あまりの理不尽さ。これが国会議員を守る手段のようです。

メディアスクラムと呼ばれる、報道陣が殺到する恐ろしさから、雅子さんはなかなか手記の公表に踏み切れませんでしたが、同じ事件の扱い方で糾弾された元NHKの記者が、辞職後、新聞記者になった相澤冬樹氏と出会い、タッグを組むことに。

「不正の強要による間接的殺人」とは、うまい表現です。近畿財務局の売却担当者が「不当だと知りながら安値売却を行なった」まさに背任罪。でも、当事者たちは皆、逃げてしまいました。

森友学園の籠池氏が「神風が吹いた」と表現しているのは、どう考えても安倍昭恵夫人との写真の影響力でしょう。安倍首相(当時)の逆切れ発言から佐川氏が忖度し、徹底的な隠蔽を図ったのは、既に周知となっています。

中野信子氏の「空気を読む脳」に、日本の官僚に勤めるエリートたちの危うさが書かれていましたが、そのような秀才たちを生み出しているいる現代の教育体制から見直す必要があるようです。

赤木雅子さんは非常に冷静な洞察力を持ち、同時にユーモアも忘れない、頭の良い方とお見受けしました。帯の

国会議員・公務員の皆さん、どこ向いて仕事してますか? 改ざんしてしまいましたが、夫・赤木俊夫はまっすぐ前を向いていました。

という文言には、ただひたすら、共感です。

赤木俊夫さんのご冥福を衷心よりお祈り申し上げます<m(__)m>