ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力

今、若者たちは「タイパ」の追求に余念がないといいます。

タイムパフォーマンス。例えば、ドラマや映画を早送りで観る。あらすじや話題の場面だけ確認できればいい、という姿勢。まあ、情報量が膨大な世の中で生きていくには、大切な処世術なのかもしれません。

そうすると、本を読む、なんて時間は《もったいない》の最たるタイムになるのでしょうね。オバサンというか限りなくオバアサンに近づいている私なんぞは「はあ、嘆かわしや」と、ガックリ肩を落としてしまいたくなります。

この【ネガティブ・ケイパビリティ】なんて、Z世代には耐えられないというより「理解不能」の概念なのでは?

直訳すると「負の能力、もしくは陰性能力」。そのこころは【どうにも答えの出ない、どうにも対処しようのない事態に耐える能力】。精神医学の専門用語です。

性急に証明や理由を求めずに、不確実さや不思議さ、懐疑の中にいることができる人。

まず、スマホを捨てないとだめですね。すぐ検索してしまうのは、ある意味、現代人の”病”です。

都会から脱出しないと、周りの迷惑になる恐れもあります。

泰然自若とか Going my way (ちょっと違うか?)とか、ものすごく寛容で懐の広い人物でないと、なかなかネガティブ・ケイパビリティは持てないでしょう。

でも、その大切さは、おぼろげながらも分かるような気がします。あまりにも混沌とした現代社会で、周りのスピードやカオスに振り回されず、自己を保つには、自身を周りから切り離さないと、情緒不安定に陥ってしまうでしょう。

帚木蓬生先生は、精神科医にして小説家。この新しい概念を、具体的な例を引いて、懇切丁寧に説いてくださっています。

隆祥館書店でひときわ異彩を放っていたこの本に、私のオツムでもついていけるかと不安を感じながら購入しましたが、とても滋味深い言葉に包まれながら読了できました。

見慣れない言葉に「何、それ?」と敬遠なさらず、好奇心をもって読んでみてください。きっと得るものが見つかるはずです。