映画化された本は、とりあえず読んでみる。これは私の本選びにもなっていますが、ミステリー作品の場合、映画を楽しむことができなくなることが、ままあります。それはでもしかたない。日本の高い映画鑑賞料を払うのはしゃくにさわるので、テレビでオンエアされるまで待って、配役の妙や、役者さんたちの演技を楽しむ、という穿った見方をすることになります。
それにしても、この「護られなかった者たちへ」という力作。生活保護と刑務所の矛盾というか盲点というか、普通に生活していると思いもしなかった視点を与えてくれました。どちらも税金でまかなわれているのに、方や弱者を切り捨て、方や犯罪者の生活を保障する。
コロナ禍で生活保護の申請をする人は増えていると想像しますが、果たして正しく行き渡っているのかどうか。
監督やキャスティングを見たかぎり、この作品はまず映像で楽しんで、ゆっくり原作を味わった方が良かったように思えます。
社会システムの矛盾をえぐり、公務員の悲哀を憂い、そして護られなかった全ての人達への鎮魂歌となる、中山七里氏の傑作。映画館に行くか、原作を先に読むか、大いに悩んでください。