ニューカンという地獄 彼女はなぜ、この国で 入管に奪われたいのちと尊厳

入国管理局のメチャクチャな実態を克明に描いた本書「彼女はなぜ、この国で 入管に奪われたいのちと尊厳」。

毎日新聞の取材班は以前も取り上げた「にほんでいきる」など、外国人が日本で共生していく上での様々な困難を丁寧に掬い上げ、世に問うている、良心的な存在です。

島国・ニッポンがかつては「異国から日ノ本の国を守る」という圧倒的な使命感の元、組織された入管。その専横的な外国人支配は、20世紀でさえどうかと思いますが、21世紀の国際社会においては、もはや化石的な極悪機関と言えるでしょう。

外国人には日本では人権がないかのような扱い。許されるべきではありません。

一部、「不法滞在者は国へ帰れ」という心無い発言をする、ナチス的日本人の存在も見受けられますが、外国人がいなくなったら、日本はあまり遠くない将来、消滅する可能性もあります。

祖国が危険な状態の人や、祖国の言葉が身についておらず、日本語ネイティブの人など、帰ることが困難な方も大勢いるということに、想像を巡らせてほしいものです。

3Kと言われるようなシンドイ仕事をこなしてくださっているのは、今やほとんど外国人です。その存在なしに、便利で快適な生活を甘受することは、もう叶わないということを、果たしてどれくらいの日本人は認識しているでしょうか。

ウィシュマさんの死を決して無駄にしないために、この本を、堅苦しい本は苦手な方は、中島京子さんの「やさしい猫」を、とにかく多くの方に読んでほしいと渇望しています。

ここで少し苦言。

私が図書館で借りたこの本は、2022年9月15日の初版ですが、数字が変です。

ウィシュマさんの体重が、収容開始時84.9キロ、その後71.5キロ、69キロ、65.5キロとありますが、身長158センチという表記からすると、ものすごくふくよかな女性となります。写真の彼女はスラリとした美しいレディですから、単位が違うのか、よくわかりませんが、冒頭に近い部分に、このようなミスリーディングを起こすようなデータがあると、せっかくの良い内容の信憑性が疑われるかもしれません。

第2版以降は確認していないので、もう改められていれば良いのですが・・・

校閲の方も、お気をつけくださいませ。