
小説現代長編新人賞・選考開場満場一致の完全受賞作。なんとも華々しいデビュー作です。むっちゃオモロイ。いや、もう、笑いのドツボにはまりました。
私は将棋は駒の進め方を知っているくらいの、3手詰めの詰将棋がわからないようなへぼ将棋。チェスも同様で、駒の美しさに魅かれることはあっても、動かし方で勝負しようと思ったことはありません。
でも、将棋の世界を書いた小説を読むのは好きです。以前紹介した柚月裕子さんの「盤上の向日葵」も面白かったですが、この塩田武士氏の2作品は、とにかく笑わせてくれます。
「盤上のアルファ」は、真田信繁、33歳。家なし、職なし、目標・プロ棋士。とてつもなく迷惑な男です。でもなぜか憎めない、ほっとけない。もちろん目が離せない。あっという間に読了です。
そして、その中でキーパーソンとなっているのが林鋭生。塩田氏がこの登場人物をスピンオフさせないはずがないと思っていたら、やっぱり出てきました。

《直角の説明に使われそうなリーゼントの頭》この絶妙の比喩で、私はこの「盤上に散る」の虜になりました。
塩田氏ご自身が兵庫県の方なので、関西弁の表記がはまりすぎていて痛快。ミステリーのような純愛小説のようでもあり、ギャグも満載です。
敗れざる者たちの熱き戦いの記、ぜひお読みください。