究極の恋愛物語「奇跡」林真理子

世の中の大多数は「不倫、憎し」なんでしょうか。

この素晴らしい恋愛物語が、称賛される一方、不道徳であるとの評価がネットを賑わし、著者の林真理子さんはかなり困惑していらっしゃいました。

私は今までのところ結婚しておらず、男友だちは既婚未婚を問わずそこそこの数がいて、堂々と「デートしよ♡」とLINE等を送り、おしゃべりや食事、その他エンターテインメントを共に楽しむことがあります。

これを「不倫」と呼ばれたら、私の人生は【不届き至極】という評価になるでしょうね。

二人っきりで食事をすること、特にお酒が入ったりすると、もうそれがいわゆる《男女の仲》というジャッジになるそうで。

そうすると私はものすごーく「恋多き女」ということになります。

話がだいぶ逸れました。

自分のパートナーが自分以外の異性と仲良くしているのを快く思わないという心理を、理解できないわけではありません。まあ、肉体関係は確かにジェラシーでは済まない感情を沸き起こすでしょうが。

でも、この「奇跡」という物語の二人の関係は、次元が違うというか、本当に気高くてピュアで、運命の出会いとしか言いようがないのです。

出会いのタイミングが違えば、こんな苦労をお二人は味会わなかったでしょうし、もっと長く、知る人ほぼ全員から祝福されたことでしょう。

まあ、これほどの美男美女でお二人とも溢れる才能に恵まれていらっしゃったから、嫉妬する人もいたかもしれません。

イフの話はさておき、お二人がこれほど純愛を貫いたのは、梨園の妻の息子の存在が巨大だったから、と言えるでしょうか。

世の中には、親の離婚で子供が不幸になるケースが後を絶ちませんが、「奇跡」のご子息は《母の幸せ》を願う好青年に成長し、その好青年を育てた賢母の愛が根底にあることが、物語の重要ポイントにもなっています。

愛を貫き、愛する者を守り抜く。

なんと美しい姿でしょうか。

このような素晴らしい小説を、どうか、邪な感情を交えず、ゆっくり味わいながら読んでいただきたいと存じます。