島田雅彦氏の暴走全開小説「パンとサーカス」

日本がアメリカの属国であることは、矢部宏治氏の『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』に詳述されていたので、この小説の世界は《さもありなん》という愉快犯的な気持ちで読めました。

それにしても大作です。CIAの狡猾ぶり、日本政府の腑抜けぶり、中国のオソロシサ、等々、小説という大前提があるからこそ、こんなにも自由にハチャメチャなサーカスを繰り広げられたのでしょう。

このブログでは紹介していませんが、国民的作家・故山崎豊子さんの『沈まぬ太陽』なども、小説という纏いを着た立派な告発でした。日本航空が自社の近隣の書店から、この小説を全て撤去させたというくらい、かなりリアルな暴露物語。紙媒体に証拠を残すというのは、作家の方の使命感をゆさぶるのかもしれません。

核の平和利用とは「発電もする原爆」とか、資本主義の自由競争下で奨励されているのは実は弱肉強食とか。島田氏のオリジナルなのか既に言い慣わされた表現なのかは調査不足ですが、言い得て妙と感心するばかりでした。

【小説で起こす革命】と帯にありますが、どうか平和裡に政府や官僚が総入れ替えされて、腐敗しきった因習が消え、まっさらな「独立国家日本」が実現するよう、この本の読者から【平和なクーデター】が起こされることを夢見たいと思います。