元国会議員による監獄日記

獄窓記 山本譲司(元衆議院議員)著

「ケーキの切れない非行少年たち」にあげられていた推薦図書を読んでみました。「獄窓記」山本譲司著。元衆議院議員という肩書には驚きましたが、監獄の中のことがリアルに分かる、興味深い内容でした。

出だしの逮捕前はちょっと言い訳がましい感がありましたが、入所後の記述は切実で骨身に沁みます。山本氏が政治家の当時、福祉関係に携わっていたこともあり、冷静な視点で、刑務所の様々な問題点を語っているところは、ひじょうに勉強になりました。氏の語彙の豊富さにも感服です。

この本が書かれた当時で、全国には59か所の刑務所があり、どこも定員より収容者数の方が上回っていたようです。職員も不足しており、収容者も監視する方にも不満が鬱積している様子は、想像に難くありません。

「ケーキの切れない・・・」にもありましたが、収容者が減り、納税者が増えれば、社会はもっと平和で豊かになるでしょう。刑務所の中にはハッキリ言って「人権がない」に等しい。それなのに、犯罪者が減らないのは、なぜなのか。そのことを考えると、社会の矛盾に突き当たり、暗澹とした気分になります。

娑婆の生活では、身寄りもなく、日々の食べ物にも困り、寝るところもみつからない。それなら犯罪を犯して、屋根があり、日々食事が提供され、週に2度は入浴もできる刑務所に入った方がマシ。そんな悲惨な状態の人が、世の中には少なからず存在する。。。もし人権問題云々を考慮し、刑務所の居心地が改善されると、わざわざ牢に入ろうと考えて、罪を犯す者が増える。。。なんとも悩ましい問題です。

先日はラジオで唖然とするニュースを聞きました。あるイギリス人の収監者が英語でメモを書いていたら、日本語以外の言語で書くことは、暗号と見なされ禁止されている、と、そのメモを没収されたというのです。

外国人の増加=犯罪の増加、という短絡的な考え方をする人もいますが、冷静に考えれば、それは違います。日本に無理やり連れて来られた人ならともかく、大部分の外国人は、希望して来日しており、彼らにとって恐ろしいのは、強制送還・再入国禁止です。そんな下地があれば、犯罪を犯そうなどと考えるわけがありません。

現に外国人による事件のニュースが多くなったと感じるのは、マスコミの作為によるところが大きいでしょう。日本人高校生による万引きのニュースより、ブラジル人主婦によるカゴ奪取の方が、目を引く(記事を読んでもらえる)可能性が高いからです(ブラジル人の方に他意はありません。ごめんなさい)。発生数は雲泥の差でしょうが。

安倍譲二氏の「塀の中の懲りない面々」も面白いですが、この「獄窓記」のような真面目な手記も、もっと注目されればと思います。柳葉敏郎主演でドラマ化もされたようですが、この原作を含め、私は全くノーマークでした。2003年の発行なので、古いハナシで恐縮ですが、もしご存知なければ、ぜひどうそ。