赤と青とエスキース 青山美智子著 魅惑のラブストーリーでした。

文章が紡ぐ可能性。

文章、それ自体が芸術でもありますが、文は時に音楽や絵画を、雄弁に魅力的に物語ります。

音の世界を素敵に描いた代表作は、恩田陸さんの「蜜蜂と遠雷」でしょうか。東野圭吾さんの「夢幻花」や「手紙」も、聞きたくてたまらなくなる表現に満ちていました。

そして、絵の世界。思いつくのは原田マハさんですかね。彼女自身が絵のオーソリティなので、代表作が数多くあります。

そして今回ご紹介する「赤と青とエスキース」。頭の中でいかようにも想像し夢を膨らますことができる、文章で書かれた「絵画(エスキース)」。

私のような絵心のない凡人には、ただもう「見たい! 見たい!」という好奇心が突き動かされるだけで、頭の中に映像を結ぶことができません。素晴らしいんだろうな、オシャレでかっこよくて幻想的で・・・ と自由奔放なファンタジーに耽るのみ。でも、読者としては、まさに虜になっている状態。青山美智子さん、うまいです。

私は絵が描けない分、観ることにはこだわりがあり、若い頃に大枚をはたいて買った、とある画家の《原画》を持っていることが、秘めたる自慢だったりします。

複製画やシルクスクリーンが無い、全くのオリジナルで、私の感性に訴えてきた絵。こんな風に書くと、見たくなりませんか? どんな絵かというヒントは全然与えず、ズルイと言われそうですが。

さて「赤と青とエスキース」に戻りましょう。文章も素晴らしかったけど、表装もとてもステキですね。著者がこの本を書きおろしで上梓する際、かなりのこだわりをみせたのではないかと思わせる、上品で示唆に富んだカバーです。

部屋に飾っておきたくなるような本。中身も飛び切りの傑作。お値打ちです。