少しバックグラウンドからご説明いたします。
この本の出版社《桜山社》の社長・江草三四朗さんが、ある日、朝日新聞に取り上げられていたのが目に留まり、江草さんご自身のご著書「トップ営業マンとして大切なことはみんなリクルートから教わった」を読みました。
そう、私がかつて勤務した会社の江草さんは後輩にあたるようです。時代も事業部も異なるので、クロスはしていませんが、その真摯な営業スタイルやお人柄がよく伝わってきました。同時に私のリクルート時代の強烈な思い出の数々も蘇り、若かったな~と、しばし感慨に耽りました。
で、桜山社が出版している本で興味をそそられたものを読破しようと、最初に手に届いたのが、この本「愛しの寿司マエストロ―井上修一の軌跡」です。
これはタイトルにもあるように自費出版で金額も表示されておらず、中を見ると「寄贈本」でした。
ご著者が井上修一さんのお母様・井上満佐子さん。三重県尾鷲市の方で、尾鷲市立図書館に寄贈されていた、というわけです。
自費出版の本というのは、自分の知人関係のものでなければ、なかなか出会う機会がないと思うのですが、この本は母の息子への愛が膨大に詰め込まれていて、それが装丁や書面に盛り込まれており、江草三四朗さんの本造りへの熱意や愛情が伝わってきて、とても温かい読後感を持てました。
井上修一さんという寿司マエストロの存在を存じ上げず、惜しいことをしたなあと、しばらく口が《寿司食べたいモード》に。芸術的でしかも美味!となると、どうにかして一度味わってみたいと思うじゃありませんか。
残念ながら寿司マエストロ・井上修一さんは35歳という若さで交通事故に遭われてお亡くなりになりました。この本はお母様が嫁(修一さんの妻)や孫たち(修一さんの娘と息子)に、夫や父親がどんなに素晴らしい人物であったかをキチンと記録に残し、特に孫たちがお父さんの偉大さを理解力が備わってから知ることができるように、という心情から生まれました。
豊富な写真は、修一さんの天才ぶりが伝わる見事なお寿司や、見ていて嬉しくなるような笑顔がいっぱいで、強烈に惹きこまれます。
こんな本の出版意図もあるんですね。またひとつ、勉強になりました。