「日本語が亡びるとき」水村美苗さん書き下ろしの超問題作をやっと読みました

日頃、日本語を母語として使い、教えながら、私は遥か昔の方々に尊敬の念を贈ります。

文字を持たなかった時代、中国の漢字をただ音だけで取り込むのではなく、意味もキチンと理解して日本語に導入してくださった先人の知恵と努力。もう感謝しかありません。

もちろん、それ以前に、表意文字という世界で稀に見る文字を生み出した、中国という国の偉人たちにも、あらためて敬意を表します。

そして、片仮名・平仮名という固有の文字を作ってくださったおかげで、三種類の文字で豊かに表現できる土壌で、自由に文章が書ける喜び。本当にありがたいことです。

世界の共通語として君臨している「英語」は、他の言葉を母語とする人々にとって、学びやすい言語ではありません。ゲルマン系の言葉にフランス語が混ざり、文法もスペルも規則性がないケースが多々で、発音も複雑。国力にモノを言わせて、まるで世界公用語のような位置づけになっており、インターネットの普及で、ますます英語ができないとグローバルには生きていけなくなるのでしょうか。

イギリスを旅行した時に感じたのは、英語がわからない人たちに対する英国人の思いやりのなさ。道路標識など、旅行者がよく訪れるような案内に関する表示は、英語オンリーでした。さも「当然でしょ」と言わんばかりに。

コンピューターのOSのコマンドは、私が学生時代に勉強した時は、英語が基本になっていましたが、今ではどうなっているのでしょうか。

水村氏の著書では、ネットの中で世界中の人がライブラリーとして利用する文献は、おそらく英語で書かれるだろうと危惧されています。極端な例を書くと、プーチンがウクライナへの宣戦布告をロシア語で表明しても、ロシア語を理解する人間は、英語理解者より圧倒的に少ないので、一部の人にしか分からないわけです。

どんなに素晴らしい科学的発見も、英語で発表しなければ、世界に認知されない。

私は易しい英語はなんとか読めますが、喋るのはサバイバルイングリッシュだし、書けばスペルミスだらけだろうし、英語にこの世を征服されたら、ものすごく困った事態に陥ります。

日本語が、特異な国土の立地や、時の洞察力ある賢者たちのお陰で、守られ続けているという事実。言文一致により、語源があいまいになりつつあるという実態。氾濫する片仮名言葉で、せっかくの日本語が崩れつつあるという悲劇など。そして、今後避けられないインターネット社会の猛威。

日本語の面白さ・美しさ・便利さを日本語学習者にわかりやすく伝えようと、日々教案をアップデートしておりますが、亡びてしまうのでしょうか???

留学中に知り合ったZIVIが、漢和辞典を駆使しながら懸命に日本語を勉強していた姿を思い出し、なんて安易な世の中になったことと、自分も恩恵に浴しながら、憂いずにはいられません。

国語はとっっっても大事です!!! 文科省のお役人、義務教育の先生方、そして世の親御さんたち。どうかまず、国語力を身につけさせる教育を、ぜひぜひお願いいたします。