林真理子さんの傑作・下流の宴

身近に起きる格差社会の現実!

多筆で多忙な林真理子さん。新聞連載小説を何本も書いておられますが、この「下流の宴」は秀逸です。登場人物の設定、ストーリー展開、小説としての完成度、いずれをとってもピカイチです。

「まさか自分の息子が、中卒になろうとは考えてもみなかった」読みようによっては差別発言ですが、一般的な母親なら、ノーマルな感覚と言えるでしょう。

「可奈が望んでいることは、母とは比べものにならないほどの豊かで充実した人生である」ある意味、他力本願的な生き方で、”ビジネスクラスで家族旅行に出かける女”を目指す。女性がキレイに生まれると、こんな人生を選ぶものなのでしょうか? 

一方、美しくない女性として描かれている珠緒は、母に「お金には一生縁がないと思って間違いない」と確信を持って諭されています。

この小説はかつて中園ミホさんの脚本で NHK のドラマにもなりました。キャスティングが絶妙で毎週火曜日の夜を楽しみにしていた覚えがあります。

キーパーソンの福原翔君を演じたのは、あの「エール」の主人公・窪田正孝さん。若かった。2011年のドラマです。

三重県をものすごい《田舎》扱いされたのは少し不満でしたが、東京方面の方には、やっぱりそう映るのでしょうね。

表紙がユーモラスですが、もう少し工夫しても良かったのでは? もっとたくさん売れていてもおかしくない、林真理子さんの傑作。楽しんで読めることうけあいです。