デュッセルドルフという魔京

丹波の美酒「小鼓」をワイングラスで飲んでます♡

今朝の新聞広告で、佐々涼子さんの「エンド・オブ・ライフ」がノンフィクション本大賞を受賞されたことを知りました。先日も朝井まかてさんの「グッドバイ」が第11回親鸞賞を受賞されたニュースを新聞でみました。私が純粋に”面白かった、感動した”本が賞を獲ったという事実は素直にウレシイですね。

さて、むか~し大阪に住んでいた頃、素敵なレストランを見つけました。日本酒をワイングラスで楽しみながら創作フレンチをいただく、というなんともオシャレなお店でした。当時はワインと言えば辛口の白しか飲めず、日本酒が好きだった(いや、今でも好きです!)ので、このお店には《イイ男》とデートする時によく利用したものです。

で、やっとデュッセルドルフのお話。皆様はこの街の別名をご存知でしょうか? 「ミニトーキョー」とドイツでは呼ばれています。アメリカならリトルトウキョウですね。ドイツ人はリトルではなく”ミニ”という言葉を冠して、ある国の人が多いエリアを表現します。例えばトルコ人の多い街は「ミニイスタンブール」などです。

私の話は少し古いので、現在とは違っている情報があるかもしれませんが、それは見逃してください<m(__)m>

2000年当時のデータでは、デュッセルドルフには約60万人の人が住み、うち6000人ほどが日本人でした。その1%の人口が、市の税金の10%を納めていたといいます。優良な日系企業が数多く進出し、またそこで働くのも多くは日本人。10%は法人税と所得税の合算で、かの地は「日本人様様」という扱いでした。

そこで、妙なことも起こりました。私は駐在員が日本から赴任すると、彼(男性のみでしたねえ)の住民登録、滞在許可(VISA)・労働許可の取得、銀行口座の開設や住宅選びのサポート、免許の書換えなど、ドイツで無事生活しながら仕事のできる環境を作るために、全面的にバックアップするのが大事な業務でした。ところが外人局(Ausländeramt アウスレンダーアムト.VISAを発給する所)に行くと、《本人は出頭(?)しなくても良い》というのです!

日本人駐在員がいかにデュッセルドルフで大事にされていたか、その「思い」がこの措置に託されていたようでした。当時、外人局は長時間待たされる場所という悪名がとどろいており、又、局員の応対も無愛想で、諸外国人に非常に評判が悪かったのです。

それにしても滞在許可を出すのに、本人がいなくてもいい、というのはムチャクチャだと感じましたが、駐在員にとっては赴任してすぐのたくさんの煩わしい物事のうち、ひとつでも減るというのは、ありがたいことだったのでしょう。

デュッセルドルフがどれほど”日本”か、当時の風景を思い起こしてみます。

Immermannstraße インマーマンシュトラーセ・別名日本人通り。この通り沿いには日本の書籍が並ぶ本屋が2軒、本物の日本食材が手に入るアジアンスーパーが2軒、さらに日航ホテル(中には日本食レストランも)、カラオケ屋、雀荘、日本食を提供する日本人の料理人が働く飲食店が数軒ありました。もうつぶれていましたが、かつてはパチンコもあったとか。

所変わってオーバーカッセル。ここは日本人駐在員ファミリーが数多く居住するデュッセルドルフの中でも高級エリアで、なぜ集まるかというと、日本人幼稚園・小学校・中学校があったから。ここにも、日本食レストランがあり、格式・値段ともに高かったと記憶します。

他にも日本人が経営するゴルフ場が近隣にありましたし、日本人のハイソスタンダードサラリーマンにとっては、行き交う言葉とお札の柄以外は、日本にいるのと変わらない生活が送れたのです。

現在それらの店が残っているかは、申し訳ないですがキチンとリサーチできていません。ドイツ人の友人は日本食レストランにはあまり行かないベジタリアンで、まさか日本語書籍に食指が動くはずもなく、他の娯楽施設については言うに及ばず。コロナ禍で赴任が延び延びになっている私の個人レッスンの生徒さんが着任されたら、現地レポートをお願いすることにしてみます。

在独勤務中、FAXで「本日、一皿1ユーロ均一」という回転ずしの広告が時々入電しました。日本人は、あ、またやってる、てなもんですが、現地採用のヨーロピアンには興味津々で、「フィオーラ、これは何の情報?」と尋ねられ、その日の夕飯は、ドイツ人や香港系オランダ人の同僚と寿司三昧になったものです。

デュッセルドルフはドイツで7番目に上がる大都市です。これは新情報なので間違いありません。その街で日本人がある種の”名誉人種”的な扱いを受けているのは、納税額ももちろんですが、赴任する多くの駐在員がほとんど《大卒》であることも大きな理由です。ドイツの大学進学率は日本に比べてかなり低く、大学を出ているというだけで尊敬の目で見られるという事実があります。

日本の大学教育が果たして尊敬に値するような立派な学問を提供しているかと言うと、大きなクエスチョンマークが浮かんでしまうのですが、名誉市民の名に恥じないよう、日本人が善良なゲストとしてあり続けてくれることを願ってやみません。永住されている方が、迫害されることのないように。