伝説の女商人・大浦慶の生涯、グッドバイ

グッドバイ 朝井まかて著 傑作です!

胸のすく歴史小説を読みました。朝井まかてさんの「グッドバイ」。激動の幕末から明治にかけて、長崎で異国を相手に茶葉を商い、莫大に稼いだ金子を志士たちに注ぎこんだという、伝説の女傑のおはなしです。大河ドラマで忠実に歴史を再現しているものには、お希以さん(おけいさん、後のお慶さん。つまり大浦慶)が登場していることもあるようですが、気がつきませんでした。惜しいことをしました。

明治維新前後と言えば、坂本龍馬や新選組など、男性の活躍が目につきますが、こんなにも豪快に立ち回った女性もいたのですね。

正直に真っ当な仕事をしていれば、良い出会いに恵まれ、運もついてくる。それをお慶さんが如実に体現していて、読んでいて爽快な気持ちになれます。

朝井まかてさんの文章が、これまた歯切れがよくて、小気味いい。

私が彼女の作品で他に気に入っているのは「ぬけまいる」。これは馬喰町の猪鹿蝶と呼ばれる江戸女三人組が、お伊勢参りに行く道中が一筋縄ではいかなくて・・・成功譚は溜飲が下がっていいですね。

また江戸時代の介護についてを描いた「銀の猫」も介抱人・お咲の頑張りが、読んでいて共感を呼びます。

伝記小説でも想像上のキャラクターでも、朝井さんのオハナシは歴史考察がしっかりしていて、安心感がある。だから読んでいて感情移入がしやすいのですね。

同性ということで、ついつい女性が主人公のものに注目が集まっていますが、「先生のお庭番」はドイツ人・シーボルトが登場する、シーボルトの庭師の奮闘物語。おのこの活躍が、興味を引きます。

いずれにしても、朝井まかてさんの著作にはハズレがなく、歴史の勉強も兼ねられます。数々の賞も取られていますが、受賞作以外を敢えてあげてみました。未読の方はぜひ一読を。