政府に裏切られた、みかん農家の方たちの裁判記録

我が家の庭、只今、改造計画進行中です。花が好きな母好みの庭を、「花より団子」の私は、徐々に果樹園に近づけたいと、食べたい果物を選び出して、苗木を探しています。

まだ、アボカドとバジル(果樹じゃねえし)しか、私の希望に合致するものはない庭ですが、少しずつ増やして広げて、自給自足に近づくべき、画策中です。

私の周りの友人も、ベランダで少量の夏野菜を育てたり、週末にレンタル農園で野菜を作ったりしているなど、にわかに「農業思考」が高まっています。

この「農政棄民」は副題が《それでもみかん農家は負けない》。かつて政府が農家にみかん栽培を奨励しながら、獲れ過ぎたみかんを補償せず、それどころかオレンジを輸入してみかん価格を暴落させ、農家を困窮に追いやったにもかかわらず見放した、という、失政の歴史を丹念に綴った貴重な一冊です。

みかんと言えば、私が子供の頃は、冬のこたつの上に必ず籠盛りされ、1日4~5個は食べていた記憶があります。段ボール箱に入ったみかんを購入し、一冬で何箱消費したか。冬の貴重なビタミン源でした。

段ボールの大きさを形容するのに《みかん箱》というくらい、箱入りみかんは一般的でした。そのみかんがだんだん品種改良され、輸入品も増え、いわゆる温州ミカンが廃れていったのは、実は政府が農家に梯子をかけてから外したという【大失政】によるものだったのですね。

政府としても、自ら失策を認めれば、あれも失敗これも失敗と、次々に補填補償をしなければならなくなるため、ある意味「苦渋の対応」だったのでしょう。司法までが加担したように見えるのは、ちょっと陰謀めいたものも感じますが。

農民が諦めず、政府に立ち向かったという事実。弁護士も、この記録を埋没させないために、公にするため、という姿勢で裁判に臨んだこと。そして、このようなキチンとした体裁の書籍が残されたことは、ものすごく意義のあることと、心から賞賛したいです。

山下惣一さんの遺されたものは、尊い価値のあるものが多く、日々勉強させていただいております。

最後に、山下さんの考えていらっしゃったと思われる本音らしきものが垣間見られる文を、ここに引用したいと思います。

「この国の農民たちはわが娘を農家に嫁がせず息子に後を継がせず、祖先伝来の公共財でもある田畑の耕作を放棄した。一方、消費者は安価と利便性のみを求め、その食生活は風土と伝統から乖離し、健康のみならず家庭環境、ひいては次世代を担う青少年の精神形成にも重大な悪影響を及ぼすまで堕落した。政治と行政は一体となってその都度、迅速かつ適切な諸政策によってその防止、改善策を展開してきたが(???)、愚衆はそれを受け入れず、結果として農業は滅び、食なき民となり、ついには飢餓に至った。すべては愚かなる国民の責任である」