隆祥館書店の二村店長より推薦いただいた「サード・キッチン」白尾悠著

やっと念願の二村知子店長にお会いできました。もう感激! 一万円選書のセレクト業務でお疲れのようでしたが、日々必ず店頭でお客様に接し、心をこめて選書してくださる。本当に頭が下がるお仕事ぶりです。

いわた書店の岩田店長とは一味違った本選びで、私の興味のベクトルを更に深めるというイメージ。とても示唆に富んだ作品をご推薦いただきました。

白尾悠さんという著者は今まで存知上げなかったので、また新しい作品に出会えるのが楽しみです。アメリカの大学を卒業されており、その留学体験を(おそらく)元に書かれたのが「サード・キッチン」。日本人留学生が陥りがちな負のスパイラル、そこから抜け出そうともがいていたところで出会ったのが、ある食堂です。

この作品を読みながら思い出したのは、自分自身の留学時代でした。

日本人の少ない学校をと思って田舎を選んだのに、思惑は大外れ。いっぱいいました。クラス分けでは、日本人が一番多いところに配属されたので、先生に直談判し、一ランク下のクラスに変更してもらい、とりあえず納得。それでも日本人が他に2人いましたけどね。

サード・キッチンに通じるかどうか、私が体験したリアルなエピソードは・・・

学生尞のキッチンには、共同で使える調理器具や食器がありました。そこで目についたのが、欧米系留学生の横暴ぶり。食事の支度はさすがに自分達でするのですが、食べた後、使ったナベ・フライパン・お皿にカトラリー、全てほったらかしなのです。自分が使ったものは自分で洗って片付けるよう、尞の規則にも書いてあるし、寮長からの勧告もありましたが、彼らは絶対に洗いものをしませんでした。

数が限られていたため、他の留学生たちは、まず鍋釜を洗うことから食事の支度が始まりました。料理をしながら、盛り付けるための器を洗い、ナイフ・フォーク・スプーンも(私たちはお箸を使うことが多かったのですが)きれいにし、やっと食事にありつけるという感じ。

私は寮住まいではなかったのですが、たまには大勢でアジアの料理をというお誘いに乗ったりして、その度に同じ光景を見たので、もう日常茶飯事だったのでしょう。

留学生としてドイツにやってくる若者は、大抵は裕福な家柄で、例えばアメリカ人などは、掃除や家事全般は黒人やアジア人の家政婦にさせている、というのがノーマルだったりするのでしょう。

先に食事をして、こっちがほったらかしておけば、と思うかもしれません。そうすると彼らは外食するのです。また勤勉な日本人は使った後の残骸をそのままにしておくというのは、良心が許さなくて。小心者なんですかねえ。

出身地や LGBTQ、経済格差などで、差別や偏見が横行している世の中を《みんな平等》という世界に変えていけるよう、語学講師として地元で貢献したいというのが、今後の私の目標です。この「サード・キッチン」をたくさんの方に読んでいただいて、少しでも文化相対主義者が増えていけばと、切に願っております。