第15回中央公論文芸賞受賞作 桜木紫乃 家族じまい

家族じまい 桜木紫乃著

「ホテルローヤル」で直木賞を取られた桜木紫乃さん。北海道ご出身ということで、私が読んだ氏の作品は、舞台がいつも北海道でした。この「家族じまい」も同じく道内の街が舞台です。

三重県のマイルドな気候の中で暮らしていると、彼の地の冬の厳しさの表記に、身が引き締まります。自分は恵まれているなあ、甘やかされているのだなあ、と日常に対し感謝の念が起きるのは、そんなフとした時です。

夫婦のあり方、老後の心配、介護の実態に二世帯同居など、高齢化社会真っ只中の日本の日常が描かれた傑作がこの「家族じまい」。いろいろな家族の様子が縦横につながっていて、さながらオムニパスドラマを見ているような気分になります。

スーパーヒーローやヒロインは登場しませんが、それぞれが少しずつ癖のあるキャラクターで、展開や絡みが絶妙。思わず《上手い》と唸りたくなるストーリーです。

老老介護や終活など、身につまされるテーマが満載。いろんな立場の方にお楽しみいただける良作だと思います。ぜひ、どうぞ。