空気を読む日本人と読まないドイツ人を2冊の本で実感

ドイツ人はなぜ「自己肯定感」が高いのか。新書版らしい《ストレート》なタイトルです。キューリング恵美子さんは新しい書き手のようで、20年を超えるドイツ在住歴から、日独の違いをクリアに表現されています。

どちらが良くてどちらが悪い、とは言い切れません。人によって価値観が違います。

日独双方の良いところを柔軟に取り入れていけば、人生はきっと上手くいく。まさしくそうなんですよね。

日本人の横並び意識というか、しがらみにまとわりつかれた生き方というか。サラリーマンの悲哀をユーモラスに描いた短編集がありました。「ボス」というタイトルの作品は、欧米風と日本風の仕事の進め方を絶妙にコントラストさせていて、キューリングさんの意見を後押ししてくれます。

この「マドンナ」という短編集は、私が一時帰国中に待ち合わせの図書館で読んで爆笑した本でした。タイトルも著者名もメモを取る暇がなく、「もう1回読みたい!」とず~と探していたのですが、たまたま BOOK OFF でこの表紙を見て、急速に記憶が蘇った次第です。

本のタイトルにもなっている「マドンナ」という小品は、中年男性が中学生のような恋心を抱いて悶えている姿の描写が秀逸で、奥田英朗氏らしさが炸裂しています。

ノーパンしゃぶしゃぶって、まだご存じの方はいらっしゃるのでしょうか。このいかがわしい言葉を、ドイツ人の男性の同僚から聞かされた時は、日本人であることがハズカシイ、と心の底から思ったものですが、自腹で行く所ではなく、会社の経費で落とすところなのだと、この短編集が教えてくれました。

日本人の連帯サービス残業も、役得があるから我慢できている。このような考え方も、徐々に廃れていくのでしょうね。「飲み会スルー」というのが若者の常識になりつつあるそうで。

私は体育会気質や宴会の無礼講を《悪くはないもの》と思っていますが、ドイツ人の仕事とプライベートを完全に切り離すドライな生き方も、実際体験し、これはこれで良いものだと感じていました。

両極端なんですよね。どちらにもメリット・デメリットがある。そう考えて「いいとこ取り」をする、賢いライフスタイルを推進していこうと思います。

今回の2作、小説とハウツー物ですが、読み方によっては文化比較の好材料になることを示していて、面白かったです。生きることにストレスを感じている方に、なかなか興味深い組み合わせではないかと思いますよ。