インフラ整備は果たして善か?

構想10年、怒濤の1250枚!

篠田節子さんの作家生活25周年記念作品。鉱物ビジネスを巡る命を懸けた駆け引きが、巨大国家インドを舞台に行われ、謎の少女が暗躍する。。。

超大作につき、覚悟をして読み始めないと、火傷をします。いやいや、読み始めたら、「え、どうなる? どうなる?」と、勢いが止まらなくなる、社会派エンタメ大作です。綿密な取材に裏付けされた、リアリティーあふれるドラマ。さすが篠田節子さん、圧倒的筆力です。

クリスタルを巡るミステリーとも言えますが、私は《社会派》という面に、深く唸らされました。

ブログのタイトルが大そうですが、インフラを整えることは、途上国にとって果たして良いことなのか、ひょっとしてそれは先進国の驕りではないのか、と考えさせられる表記が随所に見られるのです。

篠田さんが未開地の開発について、賛成なのか懐疑的なのか、直接お伺いしてみたい。道路を作るために安い労働力として借り出され、過酷な肉体労働を強いられる貧困層。出来上がった道路は、車やバイクを持ち、ガソリンが不自由なく買える富裕層にとっての益であり、荷車を引く牛を買うことさえままならない村人には、無用の長物と言っても過言ではない。

それどころか、金回りが良くなった村と見なされ、こそ泥がはびこり、金目のものは全て盗まれてしまうのです。今まで平和だった所が、泥棒対策のために、塀や金庫・警備システムなど、長閑さはすっかり影をひそめ、無機質な町になってしまう。

富の分配の問題。国のシステムを根本的に変えなければ、何も解決しない。

耳の痛い指摘です。コロナ禍で一番困窮しているのは、最も貧しい人たちであり、残念ながら政府の採った政策は、一番救済しなければならない人たちの手には届いていません。

潤うのは恵まれている人たちばかりで、格差は広がるばかりのようです。

インドクリスタルの中では、教育の大切さにも触れられています。読み書きができなければ、5つ以上の買い物ができない。何も知らないから、口のうまい人間に簡単に騙されてしまう。

今の国民には、果たして事実は知らされているでしょうか。操作された情報、真実は隠蔽され、権力を握った者が好き放題やる。118回も国会で虚偽の答弁をしながら、責任をとらないというのは、既に常識も良識もなくなった人、と断じざるをえないのではないでしょうか。

なんだか話がおおごとになりそうなので、このあたりでやめておきます。

2014年初版のインドクリスタル。当時、林真理子さんがご自分のブログで紹介されたのをきっかけに手にしました。今回、読み直してみて、あらためて洞察の深さに感服しました。単行本は二段組み、文庫本なら上下2巻です。お好きな方でご堪能ください。