検定-日本語教育能力検定試験。この受験勉強の際、私には戦友がいました。共に学び、励まし合い、悩み、時に愚痴も言い合った仲でした。
試験結果が出た後、打ち上げの飲み会が行われたのですが、その時に聞いた戦友の言葉は衝撃的でした。
「ブラジル人が近くに住んでいるのよ。集まってしょっちゅうバーベキューをやってて。いややわあ」
私は目が点になりました。アナタ、日本語の先生になりたいんじゃないの? 外国人に日本語を教える立場になるのよ。ブラジル人がご近所にいるのがイヤって、どういうこと???
私は自覚症状のあるお節介焼きで、街で外国人をみかけると、話しかけて世話を焼きたくなる衝動を抑えるのに苦労するタイプ。忙しい時はさすがにスルーしますが、困っている外国人には、積極的に話しかけます。
検定の勉強中「外国人集住都市」という言葉と、代表的な地名は覚えましたが、このように《芝園団地》というピンポイントの固有名詞にはお目にかかりませんでした。住民の半分が外国人というのは、横浜や神戸の中華街ではありませんが、日本の中の異国の趣があるのでしょうね。
私もかつて《ミニトーキョー》という、ドイツの日本人コミュニティに住んでいたので、どちらの立場もおおよそ理解できるつもりです。
元から住んでいる人たちにとって「乗っ取られそうな感覚」「ただ乗りされているようなイメージ」が、不安や不満になり、恐怖、ついには迫害意識になるのでしょうか。
言葉が通じないというのは、確かにハードルが高いです。私が携わっている教育現場では、もっと日本語を上手になりたい、という向上心をもった学習者は、同時に「日本人と仲良くなりたい」と熱望しています。ただ、そのチャンスがない。接し方がわからなかったり、日本人側に警戒心があるケースも多いようです。
著者の大島隆さんは、ご自身が異国人のパートナーとの間にお子様もいらっしゃるという方。外国人とのコミュニケーションには長けておられるので、いわゆるフツーの人とは視点が違うかもしれません。でも、実際に芝園団地に住み、その体験をルポタージュされた記者根性は表彰モノです。
少子高齢化が進む日本で、外国人の増加は避けて通れません。いかにうまく共生するか、そのヒントがいっぱい示唆されている良書「芝園団地に住んでいます」、ぜひお読みください。