歴史小説というのは己の不勉強が露呈するのだなあ、と、恥ずかしさを感じながらも、とても感動いたしました。
八代将軍・吉宗と言えば、松平健さんの暴れん坊将軍が思い浮かび、大岡越前と言うと、お白洲の名裁きしか思い出せない、ちょっとした時代劇フリークぶりが顔を出すワタクシ。
そんな徳川吉宗の嫡男・家重とその「口」となって一生を九代将軍に仕えた忠光(兵庫)。
長福丸(家重の幼名)と兵庫の素晴らしい人間性とお二人のご関係が、読む者の心を打たずにはおきません。
八代将軍の施策は目安箱やら享保の改革やら、いくつか、なんとか思い出せるものもありますが、九代将軍・家重がどんな人物で、何をなされたかなんて、全く存じ上げませんでした。
この「まいまいつぶろ」がどこまで史実にのっとっているのか、全く知識を持ち合わせていない私は、純粋に小説として楽しむべきなのか、隠れた歴史を紐解いてくれた良作と感謝するのがいいのか、少しぼんやりしています。
権力の世界とはオソロシイ、というのが、この二人の主人公の純粋さによって、さらにさらに炙り出され、時代が流れても、人間の本質は変わらんなあ、という思いに至りました。
今の政治の世界は、真の政治家が見えず、幅を利かせているのは政治屋ばかりで、毎朝、新聞を開くのが憂鬱です。
家重と忠光が今生に現れてくれんかなあ。
滂沱の涙を流しながら、切望する読後感です。