厚労省への根強い不信はこの本から始まりました

厚生省検疫課長が書いた赤裸々なお役所事情

宮本政於氏が身体を張って書かれた「お役所シリーズ」。率直に「お役所仕事」の実態を書いてしまったために、厚生省(現厚生労働省)はカンカン。でも宮本氏のおかげで、官僚に対する国民の見る目はシビアになったと言えるでしょう。

宮本氏が”前例のない”で片付けられる理不尽な日本の因習をことごとく覆していってくれたおかげで、今の官僚は、少しは風通しが良くなったのでしょうか? 協調性を第一に考える日本人の気風は、霞ヶ関において最も強く根付いているようです。付き合い残業、課内旅行、認められない長期休暇、玉虫色の答弁や「出る杭は打たれる。だが、出過ぎた杭は抜かれてしまう」などなど。

あまりに赤裸々なお役所の内情に、最初は爆笑し、だんだん呆れてきて、しまいには不安になります。東大卒などの国家のエリートが集まっている官僚のはずなのに、足を引っ張り合い、ミスを恐れて何事も無難にこなし、ひたすら保身に走るお役人たち。果ては、天下り先の確保のために、国民の命を犠牲にする。

そう、国民の命は、官僚組織の人たちにとって捨て駒にすぎないことを、宮本氏は正に命がけで書いていました。

写真の3冊の中には、その表記はないのですが、「官僚の官僚による官僚のための日本」には、かなり強い口調で、”厚生省は国民の命より天下り先である薬品メーカーの存続を守っている”という趣旨の記述があります。

もう記憶が薄れつつありますが、薬害エイズの問題は、血友病患者に必要な血液製剤をアメリカから輸入していたミドリ十字社と厚生省の癒着の図が垣間見えます。非加熱血液製剤の危険性を厚生省は把握していながら、天下り先であるミドリ十字社のために販売を認可し、結果、多数のHIVキャリアを生み出してしまったのです。

この事件でも、厚労省には反省の色が見えません。世界中で健康被害が指摘されている食品添加物や残留農薬が、日本ではまだ禁止されていないため、海外から、これ幸いと送りこまれ、情報不足の私たちの口に入っています。

宮本氏は無断欠勤という仕組まれた陰謀により懲戒免職になり、愛するフランスに渡り、結腸癌のため、51歳という働き盛りの歳に客死されました。もし氏が存命なら、超高齢化社会を迎える日本のために、さらに一肌も二肌も脱いでくださったことでしょう。無念です。

概して大きな会社は、大量の雇用者の生活を守るという名目で、却って国民の健康を二の次に考えている傾向があるように思われます。大量生産・大量消費は、だんだん社会にそぐわなくなっていくのではないでしょうか。

今年の暖冬・異常な雪不足などは、人間が異常気象についてもっと真剣に考え、経済中心ではなく、「地球ありき」で地に足のついた生活をするよう、神様が私たちに授けてくださったヒントのように思えるのです。

壮大な話になってきました。「お役所の掟」は、もう新刊では入手不可能とのこと。もし未読の方は、図書館で借りてみてくださいませ。