ミシェル・オバマのBECOMING、マイ・ストーリー

マイ・ストーリー ミシェル・オバマ著

アメリカ史上初の黒人大統領、バラク・オバマ。その誕生までの軌跡・秘話を盛り込んだ、ファーストレディによる渾身の回想録です。

日本語のタイトルは「マイ・ストーリー」ですが、原題は BECOMING でミシェルさんの主に子ども時代からオバマ氏に出会って恋に落ちるまでを綴った Becoming me、二人の結婚やオバマ大統領誕生までの物語 Becoming us、そしてファーストファミリーとして注目されながらの激動の日々を描いた Becoming more の3つのストーリーで構成されています。

水清ければ魚棲まず、と言いますが、オバマ前大統領は高尚過ぎたのでしょうか? アメリカ国民がトランプ大統領支持という真反対な方向に舵をきったのは、あまりに理想を追求しすぎた出来過ぎた政策に対する反発、という見解は、あちこちで散見されます。

オバマ大統領がどんなに正論を言っても、どんなに理想的な政策を提案しても、「黒人が言っているから」という理由だけで反対され続けたとしか思えない、共和党の政治姿勢。ミシェルさんは「政治は嫌い」とはっきりおっしゃっています。

そんな困難な状況の中で生まれた、アメリカ初の平等な健康保険制度・通称オバマケアはトランプによってあっさりと打ち消されました。京都議定書への批准は、トランプの得意なフェイクニュース理論により、離脱となりました。

オバマ夫人はホワイトハウスの庭に食育の実践の場として菜園を作られたと、自著の中で述べていますが、その後、この素敵なミニガーデンはどうなったのか。気になるところです。トランプが「黒人の作った畑なんぞ」と踏みにじっている図がうかんできますし、トロフィーワイフと言われているメラニアさんが土いじりをするとは想像できず、予想は限りなく悲観的です。

なんだかオバマ氏の作ってきた歴史が全部つぶされてしまって、何も残っていないような印象を与える文になってしまいましたね。すみません。

マスコミは大衆受けするニュースばかりを報道し、本当に注目すべきポイントには、なかなか焦点が当てられません。でもミシェルさんがされたこと、そしてオバマ前大統領の功績は、善意あるアメリカ人や世界中の人に引き継がれ、守られ、後世に残っていくと信じたい。

ミシェルさんもバラク・オバマ氏も自分でペンを持ち、自分の言葉で著書を残しています。トランプやメラニアが書くとは想像できません。もし彼らの本が出版されたら、間違いなくゴーストライターの手によるものでしょう。

アメリカに正しい種まきがされていることを信じさせ、草の根的には正義が生きていると思わせてくれる、ミシェルさんの等身大の語り口。「実質的な公人」として良識ある行動を示した数々の軌跡をぜひじっくり読んでみてください。