「命の閉じ方」をレッスンする?

なんとも刺激的な帯が目を引く、佐々涼子さんの「エンド・オブ・ライフ」。「エンジェルフライト 国際霊柩送還士」で開高健ノンフィクション賞を受賞されたという、ノンフィクション作家の手による1冊です。

200名の患者を看取った看護師が、自らの死をどう受け入れたのか?

死と向き合うことに倦んでいた著者に、在宅医療の取材で知り合った森山文則さんから、また死をテーマにした仕事の依頼がきます。

同じような素材を書き続けることは、「書く」ことを生業にする者には、得意分野という一面と、もっと違うジャンルにチャレンジしたい、という葛藤を産むことは、想像に難くありません。ましてや「死」という重いテーマを取り上げるのは、精神的にタフでなければ、続かないだろうし、ネガティブなイメージもつきまといます。まさに佐々さんは、そのダークサイドに引きずられるような感覚で悩んでおられ、この「エンド・オブ・ライフ」のなかでも、逡巡しているシーンが描かれています。

さて、200人の看取りをしてきた看護師・森山文則さんは、どんな最期を望んだか? それは、ひとつの大きな選択であり、私たち読者に与えられた課題でもあります。

在宅医療を選ぶ人が、少しずつ増えているとか。山崎章郎先生の「病院で死ぬということ」も衝撃的な本でしたが、病院を選ぶ、というより「良い医者と出会う」ということが、最終的には一番大事ということでしょう。あたりまえのことですが、これが難しいんですよね。

新型コロナウィルスの拡大で、医療のあり方や社会の仕組みそのものが問われる局面にきています。「世界がつながるのは、ネットの中だけで十分」などという閉鎖的な考えが広がりそうで、怖いです。正しい情報を見極める目を養うためにも、たくさん本を読みましょう。良書との出会いをお手伝いできればと、陰ながら努力してまいる所存です。